新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象は、337成分624品目、加算を受ける製薬企業は89社に上る。このうち、加算を受ける品目数が多い製薬企業のトップ10を見ると、アステラス製薬を除いて、全て外資系企業が占めたのは記憶に新しい。
その順位は、1位グラクソ・スミスクライン(30成分58品目)、2位ファイザー(21成分36品目)、3位アステラス製薬(14成分30品目)、4位中外製薬(13成分25品目)と続く。
一方、国内企業は、3位のアステラス以外では、12位に大日本住友製薬(9成分17品目)、13位に第一三共(7成分15品目)、16位にエーザイ(3成分14品目)と、トップ20には9社が名を連ねた。反対に、最大手の武田薬品が2成分7品目にとどまったのも話題になった。
加算対象品目数を各社の製品数で割った比較基準では、必ずしもこの順位にはならないだろうが、ランキング結果によって、改めて外資系企業の製品ラインナップの充実さを思い知らされた。
価格競争の起こらないニッチ領域の医薬品は、市場実勢価格と薬価の乖離率が平均を下回るため、新薬創出加算の対象になりやすい。従って、製薬関係者が指摘する「加算対象となった医薬品は、競争が少なく、あまり売れていないものがほとんど」という発言も、まんざら的外れではないだろう。
だが、今回の新薬創出加算は、いみじくもニッチな医薬品も含めた様々な領域で、外資系企業の製品がいかに数多く日本市場に出回っているかを証明する形となった。
新薬創出促進加算は、薬価が下がらずに得られた収益を、革新的医薬品の研究開発や未承認薬・未承認適応問題をはじめとする、ドラッグラグの早期解決につなげる目的で新設されたのは、今さら説明するまでもない。
日本市場における外資系製薬企業のラインナップの充実さに加えて、ドラッグラグの解決が加速されれば、国内における海外発の医薬品の比率は、ますます高まっていくのは間違いない。
もし、国内の製薬企業がアンメットニーズの医薬品開発に後れを取り続けるようであれば、何年か先には、わが国の医療現場に外資系のオリジンとジェネリック薬しか存在しないという事態を招きかねない。
そうならないようにするには、日本の製薬企業の研究開発力を質・量ともに高めて、グローバルな医薬品を継続的に上市する体制を確立していく以外に手立てはないだろう。
とはいえ、最近、特にFDAを中心に、新薬承認基準のハードルがますます高くなっている。
具体的にはどのような施策が考えられるのか。自社での新薬シーズ探索が理想ではあるが、開発パイプラインをさらに充実するには、バイオベンチャーとの提携が不可欠なものになるだろう。
米国では、医師や研究者がベンチャーを起業し、その技術を大手が買収して製品化するシステムがきちんと整備されている。わが国も、政府が牽引する形で同様のシステム構築が急がれる。
また、自社で遺伝子資産を有する製薬企業であれは、それを低分子化合物や抗体医薬にする技術を持った製薬企業とコラボレーションするのも、一つの選択肢になるだろう。また、ニッチな領域のアンメットニーズ医薬品開発に目を向けるのも重要だ。
国内製薬企業からたくさんのイノベーションが創出され、革新的な医薬品が登場することを期待したい。