通販サイトを運営するケンコーコムなどが、国(厚生労働省)に対して、インターネット等による一般用医薬品の通信販売を継続する権利の確認と、それらを禁止する部分の省令の無効の確認・取り消しを求め、昨年5月に東京地裁に提起した訴訟は、いずれも却下・棄却という形で決着した。
この判決を不服として、ケンコーコムは13日、東京高裁に控訴し、今後はネット販売のあり方が、高裁で審議されることになった。
訴訟は、厚労省が公布した薬事法施行規則の改正省令が施行された昨年6月1日以降、一般用医薬品のうち第1類薬、第2類薬の販売は、「当該薬局または店舗内の情報提供を行う場所における顧客の面前での販売(対面販売)が求められること」とされ、郵便等での販売が禁止されることについて、これまで認められていた営業権を剥奪され、営業上不可償の深刻な不利益を被るとしたケンコーコム、ウェルネットの2業者が、その権利救済を求めたもの。
原告側はこれまで、従来までも問題なく行われている医薬品の郵便等販売について、それに起因した問題や事件が存在しないにもかかわらず、明確な理由のないまま、一般用医薬品のネット販売そのものを禁止するような規制は、法律的な見地から見ても行き過ぎた規制であって、「営業の自由を保障した憲法に違反する。しかも、それを省令で定めること自体も違憲であるため、改正省令は二重の意味で違憲ではないか」などと主張してきた。
3月30日の地裁判決後の会見で、原告側は「対面販売は直接話をするから安全で、これに対し、ネット販売は購入者の顔が見えないので危険だという、従来からの国の主張を書き写すだけの抽象的な判決だ」と、強い不満を表した。ネット等では、相手の状態を目で見て判断するのが難しいという点に関しても、「薬剤師は、購入者が嘘を言っていることを見抜く資格者なのか、そうした訓練を受けているのかなど、これまでも訴訟で主張してきた。不合理な点は枚挙にいとまがない」として、徹底的に争っていく考えを示していた。
購入者の虚偽の申告を見抜く能力の判定はともかく、「法に適った販売をしている店はもちろんある。しかし、実際の店頭で、どれだけ適切な販売が行われているか、裁く側も数軒回って確かめてほしい」との原告側の声には、耳を傾ける必要があるのではと思える。
先の判決に関し、日本チェーンドラッグストア協会では「裁判が決着したわけではなく、今後も(ネット等の)消費者の権利が担保される仕組みが可能かどうか、検討は必要かと考える。消費者を軸として、薬業界が力を合わせて真剣に考えていくべき」(宗像事務総長)とコメントした。また、今回の判決を受けた格好ではないが、今後は販売する専門家の資質向上に向けた取り組みとして、薬剤師会や業界団体と連携して、集合教育を通じてレベルアップを図っていきたい意向を示した。
販売のあり方をめぐる裁判を、単なる対岸の火事と捉えずに、業界が一丸となって向上に取り組んでいく姿を、強く期待したい。