全世界的な問題としての薬物乱用についての認識を深め、国連決議による「6・26国際麻薬乱用撲滅デー」の周知を図り、薬物乱用防止対策を一層推進することを目的とする「『ダメ。ゼッタイ。』普及運動」が厚生労働省、都道府県、麻薬・覚せい剤乱用防止センターの主催で、今月20日から7月19日までの1カ月間全国で実施される。1993年からスタートした運動だが、今回は「新国連薬物乱用根絶宣言」の支援事業の一環として、官民一体となって、国民一人ひとりの薬物乱用問題に対する認識を高めることなどを目指していく。
しかし、こうした啓発運動とは逆行する形で、最近、大麻の所持・販売や不正栽培など大麻汚染が社会問題化し、今や大学生ばかりではなく、中高生といった若年層にまで問題の広がりを見せている。今の若い世代は、薬物乱用に対する警戒心や抵抗感が薄れてきており、「第3次薬物乱用期」の深刻な情勢が続いている。大麻を含めた薬物乱用防止に対し、青少年に向けた啓発教育が急がれる。
こうした状況に対応するため、国は薬物乱用防止対策の一環として「第3次薬物乱用防止5カ年戦略」の中で、小・中学校、高校の児童・生徒に対する指導・教育の徹底を指示しており、これに基づいて各都道府県でも、学校薬剤師等の外部講師による、薬物乱用防止教室の開催を促しているところだ。
先日、発表された大阪府健康医療部長マニフェストでは重点課題の項目に薬物乱用防止対策の充実を図ることが掲げられた。昨年度は府下でも、薬物事犯が増加する傾向にある。こうした現状に対し一部局だけでなく警察本部、教育委員会、府民文化部と連携して、府民運動として取り組んでいく方針を示している。
またマニフェストでは、具体的な取り組みとして、府内全ての中学・高校での薬物乱用防止教室の開催支援や、同教室に派遣する講師も積極的に養成していく考えだ。数値目標として、今年度の薬物乱用防止教室の100%開催を目指すほか、12年度までに中学・高校に配置されている学校薬剤師約600人、講師として養成することを盛り込んだ。薬物乱用啓発における薬剤師の存在は、重要性を増す方向にある。
ところで先日、神奈川県で鼻炎薬の原料成分でもある「塩酸プソイドエフェドリン」(PSE)から、覚せい剤を密造した外国人が摘発されるという事件が発生した。原料の入手ルートなど、事の詳細は不明だが、国内で販売されているOTC薬を原料としている可能性も否定できない。 該当する品目は、指定第2類薬として、薬局や店舗販売業等で普通に購入できるものだ。改正薬事法に伴う新医薬品販売制度では、対面販売が原則とされる中で、適正な情報提供と共に、不審な購入(大量購入)を見逃さないことも肝要だ。
また、インターネットの普及で、一般の青少年でも薬物乱用につながる有害情報に簡単にアクセスできる状況にある。それだけに、薬物乱用防止対策には、医薬品を取り扱う薬剤師はもちろん、登録販売者も含めて、現在の危機的な「薬物乱用」の実態を認識した上で、日々の業務に就きたいところだ。