TOP > HEADLINE NEWS ∨ 

【厚労省研究班/自殺者を調査】半数以上が向精神薬を過量摂取‐青少年の8割が精神疾患に罹患

2010年06月29日 (火)

 「自殺予防と遺族支援のための基礎調査」で、自殺既遂者76人の遺族について面接調査した結果、自殺時に半数以上が向精神薬を過量摂取していることが分かった。調査は、2009年度厚生労働科学研究費の「心理学的剖検データベースを活用した自殺分析に関する研究」班(研究代表者:加我牧子氏=国立精神・神経センター精神保健研究所)が実施したもの。特に、青少年自殺既遂者の8割では、何らかの精神障害に罹患しており、それが自殺の重要な危険因子になることも示唆されている。

 基礎調査は、▽広範な心理学的剖検の実施可能性・心理学的剖検データベース・システムのあり方▽自殺予防の介入ポイント・遺族支援のあり方--を検討するために実施された。07年12月から09年12月末までに、76人の自殺既遂者の調査面接を行い、自殺既遂者事例と地域・性別・年齢を一致させた対照群の調査も行い、自殺既遂者事例の特徴について、数量的分析も行った。

 職業の有無で分析すると、有職者は既婚の中高年男性を中心とし、死亡1年前にアルコール関連問題や、死亡時点の返済困難な借金といった社会的問題を抱えていた。無職者については、有職者に比べ女性の比率が高く、青少年の未婚者が多かった。有職者のように、社会的問題は確認されていない。

 死亡前1年間に精神科・心療内科の受診歴があった群(精神科受診群)と非受診群に分けると、両群とも38人ずつだった。受診群でやや女性が多く、また39歳以下が63・8%を占め、非受診群に比べ有意に若年だった。受診群のうち、半数を超える57・8%が、自殺時に治療目的で処方された向精神薬を過量摂取しており、55・6%が死亡前に自傷・自殺未遂を経験していた。

 精神医学的診断では、共通して最も多かった診断名は気分障害(63・5%)で、受診群で統合失調症の割合が18・9%と非受診群に比べて高く、非受診群で適応障害(16・2%)が高い点で有意差が見られた。受診群の受療状況パターンでは、89・5%が死亡前1カ月以内と、自殺の直近に受診していた。

中高年男性の有職者、アルコール問題抱える

 死亡1年前に、アルコール関連問題を抱えた群の自殺事例では、40~50代を中心とした中高年男性で、しかも有職者という特徴があった。さらに、▽習慣的な多量飲酒▽自殺時のアルコール使用▽自己傾性、死亡時点の返済困難な借金▽アルコール依存・乱用--といった診断が可能な人が、81%に認められるといった特徴もあった。なお、アルコール関連問題の有無で、自殺前の精神科受診歴に差はなかったが、アルコール関連問題を標的とした、治療・援助を受けていた事例は皆無だった。

 76人のうち、30歳未満の20人を対象とし、精神医学的、心理・社会的問題の経験率を算出すると共に、男女の経験率も比較した。その結果、全体の8割に、何らかの精神障害への罹患が認められた。これは、若年世代でも精神障害への罹患が、自殺の重要な危険因子になり得ることが示唆されるものだった。

 精神医学的診断以外の心理・社会的変数では、▽過去の自殺関連行動の経験▽親との離別▽精神障害の家族歴▽不登校経験▽いじめ被害経験--といった変数で、4~6割の経験率が確認され、特に女性の事例で、こうした危険因子の累積が多く認められた。

 また、不登校経験者の75・0%は学校に復帰しており、目先の学校復帰もさることながら、学校教育現場での長期的視点に立った、精神保健的支援の必要性が示唆される結果ともなっている。

若年期の経験も注意

 一方、08年1月から09年7月までに収集された20歳以上の自殺事例52例についても、近親者に対し対象群群本人の情報を聞き取り、これを既に収集されている事例群の情報と比較した。

 自殺のサインでは、▽死について口に出す▽過去1カ月の身辺整理▽不注意や無謀な行動▽身だしなみを気にしなくなる--が自殺のリスクと強い関係にあった。また従来からの、▽自傷・自殺未遂の経験▽失踪や自殺以外の過去1年間の事故経験▽親族や友人・知人の自殺および自殺未遂--も自殺と強い関係があった。

 職業関連要因では、配置転換や異動に関する悩みがある場合に、自殺の相対的リスクが有意に高かった。

 心理社会的要因では、▽子ども時代の虐待やいじめ▽家族や地域との交流の少なさ--が自殺リスクと有意に関連していた。身体的健康に関しては、ADLに伴う身体的問題がある場合に、自殺リスクが増加していた。睡眠障害がる場合も自殺の相対的リスクは高かった。

 このほか、飲酒者でも自殺の相対リスクが高いが、特にアルコールを寝るために使用する場合に相対的リスクは高くなっている。大うつ病のほか、アルコール乱用・依存、精神病性障害、不安障害が自殺と有意に関連している。

関連リンク


‐AD‐

同じカテゴリーの新着記事

薬剤師 求人・薬剤師 転職・薬剤師 募集はグッピー
HEADLINE NEWS
ヘルスデーニュース‐FDA関連‐
新薬・新製品情報
人事・組織
無季言
社説
企画
訃報
寄稿
新着記事
年月別 全記事一覧
アカウント・RSS
RSSRSS
お知らせ
薬学生向け情報
書籍・電子メディア
書籍 訂正・追加情報
製品・サービス等
薬事日報 NEWSmart
「剤形写真」「患者服薬指導説明文」データライセンス販売
FINE PHOTO DI/FINE PHOTO DI PLUS
新聞速効活用術