「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」(座長:嶋口充輝医療科学研究所所長)は28日、価格妥結状況など、厚生労働省がまとめた流通改善に対する取り組み状況のデータをもとに、意見交換を行った。厚労省は、メーカー、卸、薬局・医療機関の三者の取り組みを、一定の成果はあったが、まだ「道半ば」とした。会合では、今後も引き続き、流通改善に向けた取り組みを前進させる必要があるとの認識で一致した。
会合で厚労省は、08年度から2年間にわたる流通改善の取り組み状況を報告。妥結時期は全体では早まったものの、済生会や日赤、厚生連など全国規模の公的病院では、長期未妥結の状況が続いていること、全国規模の大規模病院やチェーン薬局で、総価取引が多いなどの問題点を指摘した。
また、薬価改定後の06年度と08年度の割戻・アローアンス、納入価の比較では、割戻・アローアンスは1%縮小、仕切価も1%下がったが、最終原価はほぼ同等となったことや、納入価は下がり、一次売差はマイナスのままで拡大したことを報告。薬価差は、6・9%から1・5%拡大し、8・4%となった。
薬価差の拡大について厚労省は、「公的保険制度の観点から、好ましい状態ではない。留意して取り組んでいく必要がある」との考えを示した。これらの結果を踏まえ厚労省は、「一定の改善はみられているが、道半ば」と、流通改善への取り組みを評価した。
松谷高顕委員(日本医薬品卸業連合会副会長)は、流通改善に対する医薬品卸業界の取り組み状況や、今後の取り組み方針を報告。08年度に未妥結仮納入の解消を図るため、早期妥結を推進した結果、市場価格が大きく低下。前年度マイナス2・69%であった売差率の改善はマイナス2・04%にとどまり、営業利益率が過去最悪の0・29%に転落した。
このままでは、未妥結仮納入改善の取り組みの進展に影響することが懸念されることから、早期妥結に対するインセンティブの付与を提案した。
08~09年度のメーカーの取り組みを報告した加茂谷佳明委員(日本製薬工業協会流通適正化委員会)は、薬価告示後3日以内に価格提示をするなど、仕切価の速やかな提示をはじめ、適正な仕切価水準の設定、割戻し・アローアンスの整理・縮小などに努めたことを報告。こうした取り組みにより、「妥結率の向上につながるものと認識している」とした。
意見交換では、小山信彌委員(日本私立医科大学協会)が、松谷委員が提案した早期妥結のインセンティブについて、「どういうことを考えているのか」と資した。
松谷委員は、「最後の最後まで粘るという購入側の態度が容認されるようだと、問題が解決しない」とし、妥結が長期化した場合のペナルティや、早期妥結に対するインセンティブようなものを設けることを提案。ただ、「手前味噌なことをいっても通るわけではない」と、当事者間で検討することを求めた。
インセンティブについて嶋口座長は、金銭的なものにするのか、また、誰が誰に対してどのような負担をするのかという問題がある点を指摘、「議論を深めていきたい」と引き取った。