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【神戸薬科大衛生化学研究室】ヒト生体内のビタミンK2合成酵素発見‐骨粗鬆症などの治療応用に期待

2010年10月21日 (木)
中川氏

中川氏

 神戸薬科大学衛生化学研究室の中川公恵講師、岡野登志夫教授らは、ビタミンK2(メナキノン‐4)を特異的に作る酵素が、ヒトの生体内に存在することを、世界で初めて発見した。これまでビタミンK2は、生体内でビタミンK1(フィロキノン)から作られると、推測されてはいたが、その機構は分かっていなかった。中川氏らはその推測を科学的に証明し、生体内での合成を担う酵素の存在を明らかにした。アルツハイマー病や骨粗鬆症の治療や予防への応用が期待されるという。研究成果は「Nature」のオンライン版に掲載された。

 ビタミンKは、血液凝固、骨形成、血管石灰化の抑制、脳での神経保護など、生体内で幅広く作用している。ビタミンKには構造が似た同族体が複数存在し、その中でもビタミンK2は、他の同族体にはない骨形成作用や神経保護作用を持ち、最も生理的活性に優れるとされている。

 ビタミンK2の合成を担う酵素として、中川氏らが見つけたのは「UBIAD1」(UbiAプレニルトランスフェラーゼコンテイニング1)

 菌類がビタミンK2を合成するメカニズムを参考に、その過程で「プレニル化」を担う酵素に着目。ヒトでも似た酵素が存在するのではないかと考え、ヒト遺伝子データベースで相同性検索を行い、UBIAD1を見出した。

 UBIAD1がビタミンK2合成に関わっていることを確かめるため、ヒト由来骨芽細胞を用いて、RNAi法でUBIAD1遺伝子をノックダウンしたところ、ビタミンK2は作られなくなった。また、ヨトウガという昆虫の細胞に、UBIAD1遺伝子を導入し大量に発現させた結果では、ビタミンKの合成が高まることが確認されている。これらの成績から、UBIAD1が生体内でのビタミンK2の合成を担っていることを明らかにした。

 ビタミンK2は、同族体の中で生体組織中に最も多く存在している。一方、日常的に食事から摂取している同族体のうち、最も多いのはビタミンK1で、約90%を占めている。

 こうした事象をもとに、生体内ではビタミンK1からK2への作り換えが起こっていると、以前から考えられてはいたが、推測の域にとどまっていた。「本当に変換されているのか、ビタミンK2はどうやって作られているのか、全く分かっていなかった」(中川氏)という。

 中川氏らは2年前、マウスや培養細胞に、安定同位体の重水素で標識したビタミンK1を投与し、それを材料にビタミンK2が作られることを明らかにした。

 今回の実験にも重水素で標識したビタミンK1を用い、UBIAD1がビタミンK2の生体内での合成を担っていることを、科学的に証明した。

 今回の発見は、神戸薬大衛生化学研究室のスタッフによる成果で、他施設との共同研究ではない。中川氏は、「私たちの強みの一つは、重水素標識体を研究に使っていること。細胞中にはわずかであっても、ビタミンK2が存在する。それとは完全に区別して評価できた。ビタミンKをテーマにする国内外の研究グループの中で、重水素標識体を同じ研究室内で合成まで行えるところは、他にないのではないか」としている。

骨粗鬆症・アルツハイマー病‐治療・予防への応用に期待

 UBIAD1はほぼ全身の組織に分布し、各組織で合成されたビタミンK2は様々な働きをしている。

 今回の研究成果は、アルツハイマー病や骨粗鬆症の治療・予防に応用できるのではないかと期待されている。具体的には、▽何らかの方法でUBIAD1の活性を高める▽摂取後に生体内で効率よくビタミンK2に変換される化合物を投与する――などのアプローチが考えられるという。

 中川氏らは、これらの観点から研究に取り組んでいるほか、UBIAD1の遺伝子発現がコントロールされる仕組みや、UBIAD1の遺伝子多型などについても研究を進めている。

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