厚生労働省は、国民健康保険と後期高齢者医療制度で、後発品差額通知を拡大させるため、市町村と後期高齢者医療広域連合に代わって、医療費データを持つ都道府県国保連合会が差額通知を一括作成する運用を、2011年度から開始する。国保中央会が開発するシステムを、国保連合会に配布する。独自に取り組む市町村や国保連には、共通システムへの乗り換えを強制しないが、全国一律での実施が可能な環境を整備する。
先発品を後発品に切り替えた場合の効果を通知するサービスは、健保組合で始まった。市町村国保では、08年に広島県呉市が自治体として初めて導入したことで知られ、厚労省は医療費水準が特に高い市町村に対し、財政安定策として特に強く実施を求めるなど、医療費適正化の手段として導入を促してきた。しかし、今年5月時点で実施していたのは、10都道府県42市町村にとどまり、厚労省は省内行政事業レビューで、実施率を向上させる方針を示していた。
今後、医療費の分析ノウハウを持つ、国保連への通知作成の委託が可能になれば、市町村と広域連合は、加入者への送付業務だけで差額通知を実施できるため、事務負担が大幅に軽減する。さらに厚労省は、11年度予算で市町村や広域連合に対し、国保連への委託経費を補助することも計画している。
一方、被用者保険でも、差額通知の全国普及が進みつつある。中小企業のサラリーマンらが加入する「協会けんぽ」は、広島支部での試行を経て全支部へ事業を広げ、40歳以上で一定額以上の自己負担の削減が見込める145万人以上に対する通知を、6月に完了している。また、組合健保では、大規模組合を中心とした展開に加え、健康保険組合連合会がシステムを提供して、自力開発が難しい中小組合らを支援する取り組みを行っている。