厚生労働省、水産庁、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)、日本OTC医薬品協会、日本薬剤師会など官民一体となった連携によって、医薬品や衛生用品などの救援物資が20日、東日本大震災の被災地区に向けて横浜港を出港した。厚労省の支援計画(イニシアティブ)に基づいて、行政、メーカー団体、職能団体が連携し、それぞれが役割を発揮しての支援活動は、国内でも珍しく、各方面から注目を集めている。
今回の海上輸送は、水産庁が海上から支援物資を輸送するとの知らせを受けた厚労省が、被災地域で不足しているOTC医薬品、衛生用品などの調達と協力を、急遽、業界団体に申し入れたことが発端。救援物資の輸送を計画した厚労省が18日に、JACDS、OTC薬協に対し、「商品を緊急に確保、納品してもらいたい」との要請を行い、医薬品等の搬入・仕分け作業等の協力を、日本薬剤師会および神奈川県薬剤師会に対し要請した。
業界団体では、支援物資のリストアップなどで準備はしていたものの、緊急な要請に対し、短時間で可能な限りの対応が迫られることとなった。さらに小売サイドでも、一部の現場で衛生用品等の品薄が起きている状況もあり、「店の在庫で可能な分を、何とか供出してもらいたいとお願いした」(JACDS宗像守事務総長)という。
非常に短時間での集荷調整作業だったものの、マツモトキヨシ、ぱぱす、カメガヤといったドラッグチェーンが迅速な対応をした。また、「現状では無理との断りも多かったが、少しならばと小型車で運んでくれたケースも多かった」(宗像氏)という。それによって、翌19日朝には、横浜市金沢区幸浦の水産庁中央水産研究所に、10tトラックで約10台分の医薬品、衛生用品等の支援物資が届けられた。
この搬入・搬出作業、仕分け作業に大きな役割を発揮したのが神奈川県薬剤師会、横浜市薬剤師会、金沢区薬剤師会が中心となった薬剤師会の会員有志と、薬科大学のボランティア学生たち。薬大生に関しては、現時点では実務実習中だが、自宅待機としている大学も多い。薬剤師会では地元の横浜薬科大学にボランティア要請を行い、64人の学生が参加した。
横浜薬大をはじめ、北里大学、昭和大学、帝京平成大学、星薬科大学、武蔵野大学、明治薬科大学、昭和薬科大学、東京薬科大学、国際医療福祉大学、慶應大学の各校から80人以上の学生が集まり、薬剤師会会員を含めた総勢約150人のボランティアが、倉庫での搬入・搬出作業を手伝った。
集まった医薬品、生活用品等の救援物資は、20日に水産庁の漁業取締船に積み込まれ、宮城県に向けて出航したのに続き、翌日にも岩手県に向けて出航した。
医薬品類のチェックリストを作成するなど、作業のまとめ役となった厚労省保険局医療課の吉田易範薬剤管理官は、「特に避難所では生活物資をはじめ、OTC薬などが不足しているという声が多く、急遽対応をお願いした。ただ物資を現地へ持って行っても、必要なものが届かないこともあり、今回はいわゆる家庭の救急箱の中身を想定して、段ボールに詰め込んでから送る形とした。各避難所に最低1個くらいを目安に、約500個ほどを集めることができた」とし、緊急要請に対し迅速な対応を図った業界団体、薬剤師会、薬学生等のボランティア、流通関係者の献身的な活動に感謝した。