4月に国内初の体内埋め込み式左心室補助人工心臓「エバハート」を新発売した医療機器ベンチャーのサンメディカル技術研究所(諏訪市)は、埋め込みを実施する認定施設へのサポートを強化すると共に、製品改良によってエバハートの普及を目指していく方針だ。また、海外展開に向けた取り組みも進める。山崎俊一社長は、本紙の取材に対し、「エバハートを突破口に、他の高度医療機器の事業化にもチャレンジしていきたい」と強調。ものづくりに立脚したベンチャー精神で、世界で戦える医療機器メーカーを目指していく考えを明らかにした。
エバハートは、山崎社長の実弟で、東京女子医科大学の山崎健二教授が考案した遠心ポンプ型補助人工心臓。1991年からサンメディカルが事業化に取り組み、今年4月に保険適用を取得し、発売を開始した。
山崎氏は、「国産の人工心臓であり、まず日本で製品化できて嬉しく思う。心臓移植までのつなぎではなく、エバハートを心臓移植に代わる治療手段にしたい」と話す。現在、医療機関と連携して、エバハートの適正使用推進や、さらなる製品改良に取り組んでいる。
既にサンメディカルは、体外コントローラを半分サイズに小型化した改良機種を完成。一部変更承認申請を行うため、医薬品医療機器総合機構と相談を行っている。山崎氏は、「コントローラだけでなく、ポンプも含め、改良できる部分は改良していきたい」との意向を示す。
一方、国内でエバハートの普及に取り組むと同時に、海外での事業化にも着手している。旭化成と合弁会社を設立していた米国では、今年1月にサンメディカルが主導して開発を進めるスキームに変えた。欧州では、規制に適合している証明であるCEマークを申請中だ。第3世代補助人工心臓の開発競争が激しくなる中、コスト競争力や量産体制も強化していく。
将来的には、エバハートを突破口に、他の体内埋め込み型デバイスの開発にチャレンジする方針。山崎氏は、「輸入に依存する高度医療機器の領域で、ベンチャー企業であるわれわれが風穴を空け、産業活性化の呼び水としていきたい」と意欲を示した。