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【日本学術会議】高齢者の社会参加で提言‐医療・社会基盤の整備求める

2011年8月4日 (木)

 高齢者を否定的に考えるのではなく、高齢者であっても社会参加と社会貢献を通して、豊かで質の高い生活ができる社会を築くため、日本学術会議・臨床医学委員会老化分科会は、提言「よりよい社会の実現を目指して-老年学・老年医学の立場から」を公表した。高齢者の社会参加を阻害する疾病等に対応するため、▽在宅医療・チーム医療・チーム介護の推進▽各地域に高齢者医療センターの設置▽大学・大学院・卒後教育の充実▽医療ばかりでなく社会科学など他の領域と協同できるシステム開発--など、社会基盤の整備・充実を求めた。

 提言では、日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上高齢者の割合)は1960年に5・7%だったが、50年後の2010年には4倍以上の23・1%と、世界に類を見ないスピードで進んでいると状況を分析。その上で、「高齢化が進む日本では、高齢者の多くは単なる長寿ではなく、最期まで質の高い人生を送り、有終の美を飾って人生を終えることを望んでいる。そのためには、高齢者を否定的に捉えるのではなく、高齢者であっても社会参加と社会貢献を通して、豊かで質の高い生活を享受し得る社会を構築することが必要となる」とした。

 高齢者の願いを阻害する要因としては、高齢期に多発する疾患と共に、高齢期に生じる種々の心理的・社会的問題があると指摘。今後、高齢者の健康維持や高齢者を取り囲む福祉、心理、環境、社会システムに関する学問である老年学、高齢者の身体的問題を主として研究、教育、実践する老年医学が重要になるとした。

 また、高齢者医療・介護を支えるためには、チーム医療・介護が必要とされており、高齢者をケアする医療職・介護職に対して、包括的教育システムを構築する必要性が高まっているとも指摘。「今こそ日本においても老年学・老年医学の重要性を再認識し、今後の長寿社会の構築に向けた環境整備が必要である。人口の高齢化はグローバルな現象で、高齢化最先進国である日本の取り組みに世界が注目している」と、今後の取り組みの重要性を示し、次の現状と問題点を提示した。

高齢者の社会参加、社会貢献の推進

 日本では少子化、高齢化のため、今後労働人口が減少することが予想される。しかし、多くの高齢者、特に前期高齢者では労働することができる十分な身体能力を有し、社会貢献も可能な者が多い。これらの高齢者のための再教育、多様な就労形態など高齢者が働ける社会システムを構築し、雇用を確保すべきである。

 このように高齢者の社会参加、社会貢献を推進することは生産人口の実質的な増加もたらし、消費の増大を介した国民経済活動の増大にもつながるだけでなく、要介護に陥る高齢者の減少につながる可能性があることから、高齢者が種々の社会活動に従事するための再教育システム、多様な就労形態、新たな就労機会のためのシステム構築など種々の方策を練る必要がある。もちろん、全体のパイは限られており、若者の雇用に影響が出ないような配慮は必要。

高齢者の心身の特性を十分に理解した医療専門職の育成

 高齢者は多種類の疾患と複数要因による症候(老年症候群)を同時に保有することが多い。症候の現れ方には個人差が大きく、かつその症状はしばしば非定型的である。そのため多くの医療機関を受診し、検査・薬剤処方も多くなる。従って、かかりつけ医による効率的なスクリーニングシステムの構築と、個人情報に配慮した異なる医療機関における医療情報の共有が必要である。

 高齢者を診療する医療現場では、認知症のみならず、うつ、転倒、尿失禁など老年症候群を合併することが多い高齢者の心身の特性を十分に理解し、介護との有機的な連携も視野に入れた全人的医療が求められる。

 日本の医師養成システムでは、このような機能を果たす医師を養成し得ていない。従って、高齢者人口の急増が予想される今後に向けて、特に後期高齢者を包括的に診療する医師や老年医学を専門とする医師、そして、高齢者のケアにおいて老年医学の原理を理解する医療専門職の育成が急務である。

高齢者特有の疾患の診断、治療システムの整備

 日本では、認知症をはじめとする高齢者特有の疾患の診断、治療システムの整備は大幅に立ち遅れている。従って、その診断と治療、介護に関して、実態を調査し、学問的根拠を集積する必要がある。高齢者医療・介護を安心して行うためのエビデンスを蓄積すべく、臨床研究の推進と高い医学水準にある高齢者医療センターの大幅な拡充・増設が強く望まれる。

在宅医療・チーム医療・チーム介護の推進

 急性期病院(発症間もない急性期の患者に、一定期間集中的な治療をするための病床を持つ病院)の在院日数の短縮を図り、そこで働く医師の負担を軽減し、かつ住み慣れた自宅での生活を継続したいという多くの高齢者の希望を満たすためには、在宅医療のさらなる推進が必要である。

 また、高齢者の医療・介護および保健・福祉における多様な需要に対し、「チーム医療」「チーム介護」の必要性が高まっている。保健、医療、介護、福祉分野の専門職が疾病予防、医療、介護、福祉の課題に対する解決策を共有し、各自の専門性を発揮して、全ての医療・介護・福祉・保健専門職が連携することが重要である。

 また、それらの課題に対して、次のような対策を実行するよう提言した。

 ▽看護学、介護学、福祉学、社会学、理学、工学、心理学、経済学、宗教学、倫理学など他領域との協同で行う高齢者の社会参加、社会貢献を可能とするシステムの開発とその推進

 ▽老年学の推進と老年学・老年医学の学部・大学院・卒後教育での整備・充実

 ▽各地域に高齢者医療センターを設置し、老年疾患研究・高齢者医療におけ
るエビデンスを国家規模で蓄積

 ▽在宅医療・チーム医療・チーム介護のシステム開発とその推進

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