厚生労働省の院内感染対策中央会議は15日、院内感染制御策指針とそのガイドラインを審議、概ね了承した。改正医療法で4月1日から、医療機関等に医療安全確保が義務づけられ、院内感染制御体制整備が必須となることに対応するもの。4月以降に各都道府県に示される。
院内感染制御体制整備では、義務化に当たって医療法施行規則を一部改正し、全ての医療機関等の管理者に、▽指針の策定▽委員会の開催(無床診療所は規定なし)▽従業者に対する研修の実施▽発生上級の報告等””の四つを規定すると共に、特定機能病院と臨床研修病院には「部門の設置」、さらに臨床研修病院には「担当者の配置」の規定を設ける。なお、特定機能病院については、「担当者の配置」は、2003年11月に義務づけている。
これに伴い国は、各医療機関が指針策定の参考になるような院内感染予防指針と、それを基にした具体的な予防策の手順や対策のエビデンスを示すを示すガイドラインを作成することになっていた。
今回示されたのは、300床未満の中小病院、診療所の全てを対象に、[1]各施設が可能な限り採用すべき策[2]各施設の条件を考慮し採用すべき策[3]無床診療所でも前2項目の基準に従って採用すべき策””について示した「医療関連感染制御策指針」と、小規模病院・有床診療所と無床診療所ぞれぞれに対応する、安全性の高い療養環境・作業環境を確立するための「施設内指針」。
「医療関連感染制御策指針」では、指針は対象となる全施設の共通する道標と位置づけ、これに則り、各施設はその状況に応じた自施設の指針や、日常の感染制御業務手順書を作成し、職員に周知徹底することを求めている。
また、医療機関の管理者(院長)は積極的に感染制御に関わり、感染制御委員会(ICC)や感染制御チーム(ICT)が中心となり、全ての職員に対して組織的な対応と、教育・啓発活動をしなければならないとした。
ICCに関しては、院長の諮問機関として位置づけ、院長を議長に各専門職代表を構成員として組織、1カ月に1回程度の定期的会議を持つことが望ましいとしている。また推奨業務としては、[1]感染制御策の答申[2]改善策の実施状況調査と見直し””などが挙げられている。
ICTは、院長の直接管理下にある日常業務実践チームで、組織横断的に活動する。活動に当たっては、院長から一部権限が委譲されると共に、重要事項の報告義務が課せられる。専任の院内感染管理者は、▽認定インフェクション・コントロール・ドクター▽感染制御関連大学院終了者▽感染管理認定看護師▽インフェクション・コントロール・スタッフ養成講習会終了者▽認定感染制御専門薬剤師▽感染制御認定臨床微生物検査技師▽その他の適格者””としている。
このほか、職員の研修や、感染症発生状況調査・改善方策など、具体的な事項も盛り込んでいる。 ガイドライン案は、環境整備や器材の消毒などの項目別の手法について、臨床研究論文により科学的根拠による裏づけを調査、重要度が分かるようにしたもので、各施設が独自のマニュアルを作成する際に参照することを目的としている。
指針はほぼ案通りで了承されたが、ガイドラインについては過去の通知との整合性等の点で一部改善の要望が出された。これらは4月以降に各都道府県に示し、専門家からの意見聴取、医療機関等からのフィードバックも踏まえて今後も改善を図っていく。