先月末、薬事法改正に伴う経過措置期間が終了し、新医薬品販売制度が完全にスタートした格好になる。2009年6月の法施行から3年を経過した現在も、新販売制度の本来の趣旨浸透にはほど遠い現状があるのかもしれない。
一般用医薬品の販売制度の構築は、販売に関して、リスクの程度に応じて専門家が関与し、適切な情報提供がなされる、実効性のある制度の構築というのが本来の趣旨である。現状は、法律は整備されたものの、実効性のある販売が行われているとは未だに言い難い状況にあるのではないかという気がする。
それは、医薬品販売を行う薬剤師、さらには登録販売者に、OTC薬販売に対する意識の欠如があるのではないか。それは、厚生労働省が改正薬事法の定着状況を把握するため実施した2度の覆面調査の結果から、法令遵守が完全には行われていないとの状況があることからも見て取れる。
さらには、新たな専門家の資格として誕生した登録販売者においても、受験要件である実務経験証明書の偽造などの事例が全国的に後を絶たない。今年度から登録販売者に対する年間12時間の研修義務が店舗開設者に課せられ、資質向上に向けたあり方も改めて問われてくる。
一方、3分類された医薬品のうち、第1類、第2類薬は、対面販売の原則を打ち出しているものの、最高裁までもつれ込んだ医薬品ネット販売訴訟の可否の方向性は、その着地点すら見出せていない。また、漢方薬を通信販売で取り扱ってきた薬局団体が9割超の購入者が郵送購入に対して満足しているとの結果を公表するなど、改正法による販売のあり方に一石を投じている。
新医薬品販売制度は、逼迫する医療費の削減に向けてセルフメディケーションの推進というところに起点があると思う。その意味では、生活習慣病関連のスイッチOTC薬の上市が一つのカンフル剤となるのかもしれないが、覆面調査の結果からも、適正に販売が行えないとの医師会等の反発もあり、承認が見送られている。メーカーにも開発意欲はあるものの販売実情が伴わない現段階では、スイッチOTC化の動きは、大きく遅れているのも現状だろう。
そうした中で、OTC薬市場は右肩下がりの傾向にあるのは間違いない。OTC薬メーカー関係者からは、「製・配・販ともにWINがない市場」との声も聞かれる。一般的には健康志向は高まりを示している中で、効能・効果を明確にしたOTC薬よりも、健康食品等に市場を奪われているとの見方もある。
過去からの繰り返しになるが、やはり医薬品は分類に限らず、専門家が適切な情報を提供し、安全性を確保した販売が本来のあるべき姿と信じたい。そのためには医薬品販売に携わる全ての関係者が、再度、改正薬事法の本質を見極めた上での対応をしていくことを期待したい。