抗関節リウマチ薬「エンブレル」(一般名:エタネルセプト)の約1万3000例を対象に市販後に行った全症例調査の詳細な解析結果がまとまった。懸念された感染症の発現率は、関節リウマチ治療に用いられる抗体製剤「レミケード」とほぼ同様との結果だった。また、皮下注射による皮膚軟部組織での感染症も低値だった。
エンブレルは、皮下注射型の完全ヒト型可溶性TNFα/LTα受容体製剤で、投与後1カ月の間に重大な問題が発生しない場合に自己注射に切り替えることができる。05年3月に発売されて以来、日本での安全性・有効性を調査するため、市販後の一定期間は投与症例について全例調査が義務づけられていた。1328施設で1万3477例を登録、データ回収が可能であった7091例を解析した。
その結果、副作用発現率は30.64%で、重篤な副作用の発現率は5.68%。懸念された結核が0.1%の7例、結核疑いが0.04%の3例であった。そのほか、細菌性肺炎が1.35%の96例、間質性肺炎が0.62%の44例、ニューモシスチス肺炎が0.23%の16例であった。皮下注射による皮膚組織などでの感染症は0.56%の40例であった。
また、エンブレル単独投与による副作用の発現率は35.3%に対して、メトトレキサート(MTX)との併用で26.8%だった。
投与法の違いによる安全性も評価。通院して投与した場合の副作用発現率は34.2%だったのに対し、自己注射に切り替えた場合は27.5%、6カ月間自己注射した場合は22.6%で、自己投与による副作用の増悪はみられなかった。
今回の全症例調査終了により、エンブレルを処方できる医療機関が拡大。今後、ワイスと武田のMR2000人体制で、専門医が所属する医療機関に情報提供活動を行っていく。