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医療需要に応える薬剤師職能を

2014年06月06日 (金)

 今年度の診療報酬改定で主治医機能評価として地域包括診療料(月1回・1500点)、いわゆる「主治医」制度が新設されたのは記憶に新しい。

 主治医制度は、在宅でも病院に劣らぬケアを受けられるように、身近な診療所や中小病院の医師が、生活習慣病の治療や健康管理を行うことを目的としている。地域を一つの病院として見立てて、在宅医療のさらなる推進を図るのが大きな狙いだ。「主治医」制度によって、間違いなく治療のウエートは、病院から地域に移るだろう。

 厚生労働省はこれまで、増大する医療費を抑制するために、高齢者らが入る療養病床を減らして在宅に戻す動きを進めてきた。

 在宅医療の推進は、高齢社会における死亡者数急増に伴う看取りの場の病床の慢性的不足への対応にもなるため、わが国の医療制度において欠くことのできない施策の一つとなっている。

 では、地域医療における主治医とかかりつけ医では、どのような差異があるのか。かかりつけ医は、重篤な患者は病院に紹介すればその役割を全うしたことになるが、主治医は患者が他科を受診したり、たとえ入院したとしても常に患者を診ておく必要があり、かかりつけ医に比べて圧倒的に責任が重い。

 地域の主治医がその機能を果たすには、医療チームを形成することが不可欠である。保険薬局の薬剤師も、医療チームの一員として活躍が期待されているのは当然だ。

 「主治医」制度において、地域の保険薬局の薬剤師は、調剤以外にどのような役割を担わなければならないか。費用をかけずに医療の質を上げてきた病院薬剤師の成功モデルの中に、そのヒントが潜んでいると考えられる。

 具体的には、「電子化された医療情報の活用」「CRC業務におけるコーディネート力」などが挙げられる。電子情報データの活用により、今日の医療のレベルは確実に向上した。

 薬剤師が他職種との混合チームの要となって治験をスムーズに進めてきた実績は見逃せない。「主治医」制度では、地域の患者を訪問し、その患者に何が必要かを正確に見極め、誰に伝えれば良いかをコーディネートする役目は“薬剤師の得意技”と言っても過言ではない。

 病院薬剤師の成功例に加えて、地域住民の健康管理をアシストするには、薬局での患者の自己採血による臨床検査値のチェックも重要になるだろう。

 日本薬剤師会や地域の薬剤師会が中心となり、臨床研究と疫学研究のエビデンスを出せる体制作りも忘れてはならない。

 地域包括診療料が新設されたとき、その算定要件から“原則院外処方箋に限る”の文言が排除され、薬剤師からは多くの安堵の声が聞こえてきた。だが、薬剤師フィーは、調剤から在宅へと大きくシフトされていく方向性は揺るがない。薬剤師が生き残るには、医療需要に応える薬剤師職能の確立が不可欠となる。



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