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制御性T細胞の特異的マーカー発見‐自己免疫疾患や癌の新治療法開発に期待

2007年7月11日 (水)

 制御性T細胞とエフェクターT細胞とを区別する表面マーカーを、坂口志文氏(京都大学再生医科学研究所教授)らのグループが発見した。それをコントロールすることによって、自己免疫疾患やアレルギーなど過剰となった自己反応性T細胞の抑制や、逆に癌でのエフェクターT細胞の増強など、新たな治療法につながるものと期待されている。研究成果は、米国免疫学専門雑誌「Immunity」電子版に掲載された。

 制御性T細胞は、自己の組織を攻撃する「自己反応性T細胞」の働きを抑制する役割を担っている。正常個体リンパ球中の約10%を占めるとされ、正常な免疫機能の維持にとっては必要不可欠な細胞。実際、制御性T細胞が異常になると、自己免疫疾患が発症することが明らかにされている。自己免疫疾患などの場合では、制御性T細胞の機能が不十分だったり、不足することによって、過剰な免疫反応が起きている。

 その一方、癌患者では制御性T細胞が増加して、腫瘍免疫などの有益な免疫反応(エフェクターT細胞)を抑制していることが知られている。

 そのため、制御性T細胞の働きを強めてやれば自己免疫病の治療や臓器移植時の免疫抑制に役立つと考えられ、逆に、その働きを弱めてやれば癌を治療できると見られることから、世界各地で臨床応用に向けた研究が活発に行われている。

 しかし、これまで制御性T細胞とエフェクターT細胞を区別する細胞表面マーカーは見つかっていなかった。制御性T細胞は細胞表面マーカーに「CD4+CD25+」を持つT細胞群として区別されているが、CD25分子などは、制御性T細胞と活性化されていないナイーブT細胞とを区別する上では有用なマーカーではあっても、エフェクターT細胞でも発現されていることから、特異性は十分ではなかった。また、Foxp3も制御性T細胞に特異的に発現している転写因子だが、細胞内分子であるという問題があった。

 そのため、例えば免疫を抑制する場合には、T細胞全体の数や機能を抑制する薬剤が使われ、その結果、制御性T細胞も同時に抑制されてしまうという現状が見られている。それだけに、免疫を抑制する制御性T細胞と免疫を活性化するエフェクターT細胞とを区別する方法の確立は、制御性T細胞を標的にした新しい治療法の重要な課題となっていた。

 坂口氏らの研究チームは、そうした制御性T細胞がビタミンである葉酸の受容体(4型葉酸受容体:FR4)を恒常的に高発現させていることを見出した。特にFR4は、抗原刺激後の制御性T細胞でも高発現していることが突き止められている。

 坂口氏らは、CD25とFR4をマーカーとして、抗原刺激した細胞群から制御性T細胞のみを取り出すことにも成功した。取り出した制御性T細胞を増殖させ、他系統の皮膚片を移植した動物に戻したところ、拒絶反応を抑制できたとの結果も得ている。

 また坂口氏らは、制御性T細胞を抑制することによって、癌免疫を増強することができるかどうかについても検討を行った。方法は、FR4に対する抗体を使って、制御性T細胞を特異的に除去するもので、腫瘍抗原に反応したT細胞群から制御性T細胞だけを除くと、強い抗腫瘍免疫活性を持つT細胞が調整できることが認められている。さらに、担癌動物に対するFR4特異的な単クローン抗体の投与実験も行われた。その成績では、腫瘍接種直後にFR4抗体を投与すると全例で腫瘍を拒絶でき、腫瘍接種8日後に抗体を投与した場合でも、半数以上の例で腫瘍を拒絶し長期生存させることが可能との結果が得られている。

 癌の免疫療法として現在、CTL(細胞傷害性T細胞)療法やLAK(リンフォカイン活性化キラー細胞)療法などが行われているが、腫瘍抗原に反応性を示すそれらの細胞群を調べた結果では、制御性T細胞が5%程度含まれているという成績も得られており、FR4抗体で制御性T細胞を除くことができれば、より強い腫瘍免疫が誘導できるものと考えられている。

 それらの成績を踏まえて研究グループでは、「FR4を分子マーカーとして、制御性T細胞を特異的に操作することにより、臓器移植、担癌患者など様々な病態での免疫応答をコントロールできることが明らかになった。また、制御性T細胞や葉酸を標的とした新しい免疫・細胞療法の可能性が示された」としている。今回の研究は動物モデルを用いたものであることから、研究グループでは今後、ヒトでもFR4をマーカーとすることで、制御性T細胞を特異的に操作できるかどうかをはじめ、そのような操作がどのような疾患に有効かについて研究を進めていくことにしている。




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