来年度診療(調剤)報酬改定を議論している中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会は17日、後発医薬品の使用促進策の検討を開始した。その中で厚生労働省は、2006年度に見直した処方せん様式を再検討することや、処方せんで特定の後発品を指定された場合、医師に疑義照会せずに他の後発品への代替を認めることなどを議題として提案した。薬剤師の代替調剤を現行より広げるものだが、日本医師会の委員は「処方権の侵害だ」「何か起きたらどうするのか。慎重な議論をしてほしい」と強く反発した。支払い側は賛否は示さなかった。
後発品の使用は、全処方せんうちの1%程度(中医協調べ)。そのため厚労省、さらなる促進策を提案した。その一つとして処方せん様式の再検討が挙げられた。処方せん様式については、英仏独米(ニューヨーク州とマサチューセッツ州)では後発品不可の場合のみコメントなどを記す仕組みをとっている。そうした日本とは逆の対応を紹介しつつ、再検討を求めた。
また、代替調剤の拡大についての提案は、流通量が少ない銘柄の後発品の処方が、それを備蓄する特定の薬局への誘導につながっていることを踏まえたもので、「処方医に疑義照会することなく、別銘柄の後発医薬品を調剤することにつき、薬剤師が当該銘柄の選択理由に関する説明責任を果たし、患者が同意した場合にそれを認めることについて、どう考えるか」とし、議論を求めた。代替調剤の拡大では、口腔内崩壊錠から普通錠など別の剤形に薬剤師が切り替えることも併せて提案した。
それら提案に対し鈴木満委員(日本医師会常任理事)は、処方せん様式の変更について、「そうたびたびやられたのでは現場は混乱する。賛成いたしかねる」と反対を表明。疑義照会せずに他の後発品に代替することに対しては「処方権の侵害である」と指摘した。
それに対し事務局の厚労省保険局の原医療課長は、「疑義照会を経て他の後発品に変更することは今も行っている。しかし、その(疑義照会した)時の反応は、『いちいち聞いてくれるなという反応が多い』と聞いている。この後発品ではないとダメというのは少ないのではないか」と、提案に理解を求めた。
竹島康弘委員(日本医師会副会長)は、「そういう話をこの場で話すことに、どれほどの信憑性があるのか。医師への不信感を増幅させる。(疑義照会なしに変更した結果)何か起きたらどうするのか。だから慎重な議論をしてほしいと言っている」と、強く反発した。
処方せん様式の変更提案に対する支払い側の対応では、対馬忠明委員(健康保険組合連合会専務理事)は、英仏独米の動向を踏まえ「日本だけが逆というのは理屈が立たない」と変更の必要性を指摘。丸山誠委員(日本経団連医療改革部会部会長代理)は、後発品を使用促進している中で医師の署名がないと後発品の調剤ができないのは障害だとして、後発品の調剤が不可の時のみ処方せんにその旨を記す方が「論理的な結論」と述べた。
そのほか厚労省は、患者の同意を得た上で短期間、後発品を試せるようにし、それを診療(調剤)報酬上で評価することも提案した。例えば60日の長期処方をした場合、うち2週間は後発品にするなどの分割調剤にするなど、後発品に切り替えに対する患者の不安を和らげ、後発品への患者側の抵抗減らすのが狙い。
厚労省は、保険診療・調剤を行う際の責務を定めた療養担当者規則に後発品の使用促進について記載を盛り込むことなど、使用促進に必要な環境整備についても提案した。
中医協は現在、後発品の使用実態調査を集計中であり、それを踏まえ11月から本格的に議論することになる。