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リタリン問題、処方監査の重要性を再認識

2007年11月12日 (月)

 覚せい作用のある向精神薬「リタリン」を医師不在のまま従業員に処方させたとして、10月31日に東京都江戸川区の診療所「京成江戸川クリニック」院長の小倉暢夫、事務員の生駒祐子両容疑者が警視庁生活環境課に逮捕された。

 警察の調べによると、2人は共謀して8月21日から9月8日の間の9回にわたり、医師免許を持たない生駒容疑者らが、男女5人の患者にリタリンを処方するなどの医療行為を繰り返した。

 当時、小倉容疑者は体調を崩して入院しており、事務員に「いつも通りお願いします」と指示して処方させていた。通常、2週間分しか処方できないリタリンを、1カ月分処方することも少なくなかった。ある患者には、今年3月から9月までの間に、1日最大量6錠とされるリタリンを18錠/日処方し、1回で28日分の504錠を手渡していたという。

 患者が顔を見せるだけでリタリンをDO処方していた同クリニックは、インターネット上で「大量のリタリンを処方してもらえる」との評判を呼んでいた。「患者がかわいそうだったので、求めに応じてやってしまった」と任意の事情聴取で供述している小倉容疑者だが、元厚生省OBという履歴に驚きを隠せない。

 「理想の精神科治療の確立を求めて開業に踏み切った」同容疑者の崇高な志が、「元気が出る薬」と称して患者にリタリンを乱用させるに至るまで、どのようにして狂っていったのかを想像するのは難しい。

 このような医師主導の薬物乱用事件を防止するには、どのような手立てが考えられるのか。製造販売元のノバルティスファーマは、リタリンの難治性・遷延性うつ病に関する適応削除を、医薬品医療機器総合機構に申請し承認された。これにより、リタリンの適応症はナルコレプシーのみとなった。リタリンは、世界60カ国以上で販売されているが、うつ病を適応症としていたのは日本だけであったことから、当然の措置とも言えよう。

 適応症の見直し以外にも、向精神薬を提供する製薬企業が、異常に使用量の多い医療機関を常にチェックしておく必要があるのは言うまでもない。

 今回の医師逮捕で、ますますその重要性が高まってくるのが薬剤師の処方監査である。小倉容疑者のクリニックでは、院内調剤を行っていたため、明らかにオーバードーズとなるリタリン投与が当たり前のようにまかり通ってしまった。

 このような医師の不正処方を防止するには、処方権を持った医師の処方内容を、調剤権を持つ薬剤師がチェックする「処方監査」の機能が必要不可欠になるのは言うまでもない。

 ヨーロッパでは1240年に、皇帝の毒殺対策として王の先導により医薬分業が確立された。医師・薬剤師の間に相互監視機構を働かせるのがその大きな目的であったが、医療の質と安全性を高めるという医療本来の姿が築き上げられたのは万人が認めるところだ。

 今回の事件を契機に、改めて医薬分業推進の必要性を見直す必要があるだろう。




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