医薬品業界各企業の2017年3月期決算が出揃いつつある。輸出が主力の製薬企業は円高の影響が直撃したようだが、医薬品卸は薬価改定や長期収載品の減少とジェネリック薬増加というカテゴリーチェンジ、そして収益を引っ張ってきたC型肝炎治療薬の減少などで、軒並み減収減益となった。
この厳しい経営環境、市場環境に晒されている中で、年末には薬価制度の抜本改革に向けた政府の方針によって、全品目の毎年改定が決定した。さらに、年が明けてからC型肝炎治療薬ハーボニー配合錠の偽造品が流通したという、以前の日本では考えられないショッキングな事件が発生した。
毎年薬価調査・改定に関しては、3月29日の中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で実施当事者の負担をなるべく減らすような方策が議論されているようなので、期待を持って注目していきたい。
偽造品流通の防止については、同じ29日、「医療用医薬品の偽造品流通防止のための施策のあり方に関する検討会」(座長:赤池昭紀氏)の初会合が開催された。同検討会の目的は、「偽造医薬品の流通を防止する観点から、製造から販売に至る一貫した施策のあり方を検討する」とされている。
初会合で、厚労省の武田俊彦医薬・生活衛生局長は、今回の事件に対して、「医療用医薬品の偽造品が国内で流通し、医薬品に対する国民の信頼を損いかねない非常に重要、重大な事案であった」と強い懸念を示した。
そもそも、日本において偽造医薬品の流通は、話題にも上らないテーマだった。IFPW(国際医薬品卸連盟)総会ではテーマとして取り上げられ続けているが、日本は「対岸の火事」状態であった。それというのも、国内医療用医薬品の97%は、日本医薬品卸売業連合会に加盟する企業が流通を担っているからだ。薬卸連では、1975年から40年以上、自主基準であるJGSP(医薬品供給における品質管理と安全管理に関する実践規範)を運用している。
4月21日の第2回会合で一條宏氏(医薬品卸売業連合会薬制委員会委員長)が提出した資料によれば、JGSPは、意義と役割、組織と任務、医薬品供給と品質管理、安全管理業務、教育訓練の5章から構成されており、これまで5回にわたる改訂が行われている。これを厳格に遵守している薬卸連加盟企業が、今回の事件とは無関係だったことは当然だ。
国際的にはPIC/S-GDPが多くの国で採用されている。同検討会でもGDP導入を求める意見も出されている。薬卸連も現在、JGSPの管理実態にPIC/S-GDPガイドラインの要素を反映させる作業を進めている。
5月18日には第3回会合が行われ、論点整理に着手した。夏ごろには中間報告がまとめられる。偽造薬を日本から徹底追放する有効な具体策が示されることを切に願う。