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臨床研究法、本来主旨忘れずに

2017年5月26日 (金)

 臨床研究法案が成立、公布された。未承認薬や製薬企業から資金提供を受けて実施される臨床研究を「特定臨床研究」と位置づけ、これら実施にモニタリングや監査を義務づけるほか、実施基準に違反した場合は3年以下の懲役か30万円以下の罰金の罰則規定を設けた厳しい内容だ。高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究不正を契機に法規制を求める議論が起こった事情もあり、企業が資金提供している医薬品に関する臨床研究の毎年度の状況公表を求め、契約締結による実施も義務づけた。

 臨床研究法の審議の経緯を見ると、ディオバン事件ありきで進んできたのが実態で、本来の臨床研究をめぐる法整備のあり方はほとんど議論されてこなかった。ディオバン事件がなければ臨床研究の法整備の議論がここまで発展しなかったのも事実だが、そうだとすれば、わが国初となる臨床研究の法整備に向け、なおさら本質的な議論が必要ではなかったか。

 日本の治験や臨床研究に関する法体系は、治験に適用されるGCP、臨床研究法、そしてガイドラインとして医学系研究に関する倫理指針が位置づけられる。今後、臨床研究法の詳細は施行規則で明確化されるのかもしれないが、さらに複雑化してしまった感は否めない。

 実際、臨床研究法の附帯決議において、ICH-GCP準拠や承認申請資料として臨床研究データを活用できる仕組みを検討すること、治験と臨床研究の制度区分を明確化することが盛り込まれた。これらの部分に関する整合性は今後大きな問題になってくるかもしれない。

 欧米のように大枠で被験者保護法があり、法令に基づくGCPで規制していくのが本来の臨床研究のあり方だとすれば、企業と医師の不適切な関係による利益相反の問題という特異な出発点から作られた臨床研究法の運用で、いずれこうした不整合の解決が求められてくるだろう。

 一方、国会審議の後半に議員から、「人間の尊厳や被験者保護の確保の観点が非常に重要にもかかわらず、企業と研究者の資金の関係に強く関心が向き、検討会では一度も検討されていない。近視眼的な企業と研究者の不適切な金銭関係の事案のみに焦点を当てた立法になってしまうのではないか」との指摘があり、附帯決議で被験者保護に万全を期すこと、被験者の権利尊重を実施基準等に規定することが盛り込まれた点はプラス材料と捉えたい。

 まさに国会での指摘の通り、臨床研究法の目的が企業と医師の不適切な関係を断ち切るためというのはあまりに狭い視野である。臨床研究法の施行後、しばらく様子を見ていく必要があるが、どこを向いた立法なのか根本部分に目を向けることを忘れず、本来あるべき方向に軌道修正していく努力が欠かせない。




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