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医薬品流通改善は“背水の陣”で

2008年2月27日 (水)

 3月上旬の薬価告示から、医薬品卸は、まさに“背水の陣”で臨むことになる。昨年の日本医薬品卸業連合会総会で、松谷高顕氏が例外的に再任された。就任時のあいさつで松谷氏は、「医薬品流通改善の今がその時」だと、関係者に対して意識と行動の変革を強く促したが、全ての関係者が真の意味を理解したわけではなかった。

 昨年10月に「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」の緊急提言・留意事項が、中央社会保険医療協議会に提出された際の発言や、その後、経済界(支払側)からの意見が公となって、初めてその意味と重大さを理解した関係者も多かったのではなかろうか。それは、今の日本での薬価制度・市場実勢価格主義が、根底から覆される危険性の現実味が増したからにほかならない。

 医療用医薬品の薬価問題は、保険料・国庫(税金)・患者負担で賄われる公的医療保険下において市場経済活動が行われている日本の制度自体に端を発する。加えて、公定価格である薬価、製薬企業が卸に提示する仕切価、卸が医療機関等と交渉・決定する納入価というトリプル・プライスが存在しているほか、割戻し・アローアンスなども存在し、最終消費者である患者・国民からは非常に分かりづらい、不透明な価格形態を構成していることも事態を複雑化している。

 以前、国民的な議論を巻き起こした公定薬価と納入価による薬価差問題は、関係者の継続的な改善努力によって解決したかに思えたが、ここにきて再び拡大する動きも報告されている。

 流改懇の緊急提言・留意事項で当事者の基本認識として記された、「市場において価値と価格が反映された取引により、新薬開発の原資に充てられる循環的サイクルで成立している」「医療用医薬品は医療の一環として位置づけられ、生命関連商品として、他の商品以上に価格形成、取引条件等で透明性、公平性の確保が求められている」という大義名分は極めて当然のことだ。

 では、実際の取引現場の実情はどうなっているのか。この基本認識に立った取引が適切に行われているとは、医薬品業界、医療界の誰も言えないだろう。その背景には、製薬企業、卸、医療機関・薬局の全てが、医薬品の価格如何によって経営的破綻を来すことがあるためだ。

 医薬品卸は、製薬企業から仕切価を一方的に提示され、そこに売差を設定して医療機関と価格交渉を行うが、強力なパワーを持っている相手とは当然折り合わず、中医協で薬価調査の信用性の観点から不適切と指摘された長期未妥結を生んできた。理想と現実の乖離は、深刻なほど大きい。

 医薬品卸は、一次売差マイナスという状況からの脱却を求め、製薬企業と仕切価の交渉に入ることになるが、「値頃感」「相場的」などの単語がキーワードとして言われている。薬価告示後の仕切価と割戻し・アローアンスの交渉で、流通改善の第一ステップである新たな価格とルールが打ち出されるのか、大いに注目されるところだ。

 卸業界トップは、「今回のチャンスを逃すと、もう後はない」との認識は一致しているようだが、問題は現場である。「笛吹けど踊らず」では、現行薬価制度が、一気に他の制度・方法と入れ替わる可能性が強くなることを肝に銘じるべきだろう。




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