“ノンテクニカルスキル”を養成
薬学ゼミナール生涯学習センター(認定薬剤師認証研修機関G13)は、薬剤師がチーム医療で高い成果を生み出すために、薬に関する専門知識以外に、組織人として必要なスキルを養成する「ノンテクニカルスキル養成講座」を薬剤師生涯学習の教育プログラムに取り入れる計画だ。筑波大学が産業界で使われているプログラムから医療用に特化させる形で開発したプログラムで、今年度のトライアルを経て、来年度からの本格展開を目指す。薬剤師業務が“対物から対人へ”の時代を迎える中、木暮喜久子センター長は、「医師など他の医療職種が持つ思考プロセスを取り入れ、多職種と連携し患者と向き合える、薬剤師のあるべき姿に向けて支えていきたい」と意欲を示す。
同センターは、患者の病態、生活背景などを理解した上で薬物療法だけでなく職種の壁を越えた連携ができる「スキルミックス薬剤師」の養成に向け、全国8拠点でのLive配信による集合研修の実施やeラーニング教材での学習を支援している。近年では、薬剤師が臨床能力を身につけ、チーム医療で活躍できるよう診断から治療までの“トータルマネジメント”を意識した教育プログラムを提供してきた。
今後は薬剤師の専門スキル強化に加え、次世代の地域医療を担うリーダーを養成していくための“ノンテクニカルスキル”を持った人材育成を進めていく。従来の医療者へのトレーニングは、医学・薬学的な知識や技術を学べるテクニカルスキルに関するものが大半であったが、地域の中で様々な職種と連携し、患者の健康に貢献していくためには、患者とのコミュニケーションスキルを含め、組織人としてのノンテクニカルなスキルも要求されてきているのも事実。テクニカル・ノンテクニカルをバランス良く習得できる生涯教育プログラムを目指している。
筑波大学のノンテクニカルスキル研修は、多職種参加型でそれぞれが持つ医療に必要なノウハウや考え方を共有できるのが魅力。具体的には、自分の強み・魅力をベースにチームマネジメントのポイントを学べる「リーダーシップ&チームビルディング」、医療チームにおけるミーティング活性化に向けた会議ファシリテーションの実践的スキルを学べる「ミーティング・ファシリテーション」、問題解決の基本ステップを学び、システム思考の考え方を持って現場で解決していく「問題解決力トレーニング」、部下の成長を促し積極性を引き出すコーチングスキルを学べる「人材育成&コーチング」、業務内容を細分化・簡素化し、効率的・効果的な業務改善方法を習得する「TEAMS」など、マネジメントからコミュニケーション、リーダーシップ、業務効率化まで多岐にわたる内容で構成されている。
木暮氏は「若い薬剤師が薬局長に就く例も増え、特に個人薬局では店舗運営や人材配置で悩みが多いと聞いている。人材育成やマネジメントのスキル研修を提供していきたい」と話す。同センターでは今年度、筑波大学の多彩なプログラムの一部を試行的に実施し、本格稼働につなげる方向だ。
また、テクニカルスキルの習得においても、新たに主に若手を対象とした新たな紙媒体「THINK CUBE(シンク・キューブ)」(同センターグループ法人発刊)がある。集合研修では主に臨床医が講師となり、ワークショップを交えた実践的なプログラムを提供しているが、シンク・キューブはそのベースとなる知識の入門編としての位置づけだ。シンク・キューブは2017年2月に発刊され、登録者に年4回無料で届くだけではなく、同センターの研修認定単位が発行されるeラーニングも受講できる。
今後の集合研修の予定としては、9月10日に「わかりやすい『症候診断』Ver.2.0」、10月15日に「総合診療を学ぶ~対物から対人へ~」、10月22日に「臨床ですぐに使えるフィジカルアセスメント」、11月19日に「実践!参加型在宅医療講座」など昨年度よりも工夫を懲らした内容でプログラムを増加した。12月以降には、書籍を執筆した演者がその書籍を用いての集合研修なども計画している。
木暮氏は「在宅医療や健康サポート薬局で薬剤師の存在意義が問われる時代になる中、ノンテクニカルスキルが必要になる。“薬剤師がいて良かった”と思ってもらえる環境をサポートしたい」と力を込める。
薬学ゼミナール生涯学習センター
http://www.yakuzemi-shougai.jp/