医療機器およびヘルスケア機器・システム販売のキヤノンライフケアソリューションズ(キヤノンLCS、本社東京品川区)は、調剤業務の大幅な効率化を実現する全自動散薬分割分包機「AX930」を発売した。同社は2009年に、調剤業務の自動化・省力化につながる全自動散薬分割分包機「E-FAS」を発売しており、新製品の「AX930」はこの後継機となる。これまでの「E-FAS」の最大の特徴である“回転ホッパー”と“トリプルホッパー”を継承し、機能をチューンアップすることで、精度の安定と分包時間の短縮を実現した。また、タッチパネルを標準で搭載し、分包作業の効率化も支援する。
散薬を正確に分包するには、回転ホッパーからR円盤に均等に撒く必要があり、少しずつ配分するため時間がかかりすぎるという課題があった。ホッパー内のフィーダーを利用して均等に配分する場合、少しずつゆっくり配分すれば、それだけ精度は良くなるが、全ての散薬が落ちるまでに時間を要してしまい、全体の分包時間が長くなってしまう。この点がR円盤を使った分包機の弱点とも言える。
「AX930」は回転ホッパーにより、高精度と短時間という反する要素を、高いレベルで実現した。R円盤とホッパーを逆回転させることで(従来の固定式に比べ、同じスピードで逆に回転させることにより移動距離は2倍となる)、互いの相対速度を上げると共に、距離が確保でき、ゆっくり時間をかけて配分した場合と同等の精度でスピーディーに配分することができる。
また、小児などの散薬を混合する分包を行う際には乳鉢を使用して、一度攪拌する必要があった。「AX930」はクラスで唯一、三つの散薬投入ホッパーを搭載しており、このトリプルホッパーにそれぞれ散薬を投入することで一度に配分することを可能にし、作業時間の短縮を実現した。
さらに分包機本体には、見やすくシンプルな5.7インチ液晶カラータッチパネルを搭載しており、包数や種別などの分包条件のほか、名前や服用時間、日付などの基本的な印字指示も可能で、専用のPCを必要としない。入力情報を集約することで、少ないタッチ数で分包を開始することができる。同タッチパネルは「AX930」専用に設計されており、防塵性・耐久性にも優れている。
なお、その他の印刷項目やレセコンなど上位からのデータ連動が必要な場合は、オプションで専用の印字ソフトが利用できる。
散薬を掻き出すブレードを「標準タイプ」と「ワイドタイプ」の2種類から選択できる機能も、新たに加わった。分包条件に応じて選択できる分割ブレードにより、1包に多量の散薬を分包する際や、顆粒などの流動性の高い散薬を分包する際の散薬の掻き残しを最小限に抑えるため、精度の確保につながる。
「AX930」本体は税別価格450万円、分包機用印字ソフト(別途PC、専用架台が必要)は税別価格60万円。