厚生科学審議会の医薬品医療機器制度部会が昨年12月に取りまとめた内容を踏まえた薬機法改正の関連法案が、今通常国会に提出される予定である。今回の改正案には薬局・薬剤師に関係する内容以外にも、多方面にわたる事項が盛り込まれている。
特に、医薬品・医療機器の製造、流通、販売に関連するガバナンス強化の点に注目したい。ここ数年で見ても、医療用医薬品の製造販売業者において、承認書と製造実態の相違や、報告義務対象の副作用が定められた期限内に報告されていないなど、適切な業務が実施されていない事例が散見されていた。
これらの中には、違法状態にあることを企業役員として認識しながら、その改善を怠り、漫然と違法行為を継続していたものや、適切な業務運営体制や管理・監査体制が構築されていないことで違法行為を発見、改善できなかったものがある。いずれにしても、許可業者の役員による適切な監視・監督やガバナンス体制の構築に問題があったことは間違いない。
現在、薬機法改正と並行してGMP省令改正に向けた作業も進められている。15年ぶりとなる省令改正では、PIC/S GMPガイドラインなどの国際整合性推進のほか、薬機法と関連する品質システムの強化として、上級経営陣に対する責任も明示する方向にある。
そうした中、大阪府の薬務課は、昨年から府下の第1種医薬品製造販売業に対して立入調査を実施した。その冒頭で、薬務課長が経営陣との意見交換を取り入れている。1月22日時点で、12社の社長からガバナンス強化のための方策などをヒアリング。「トップとしての責任、国の通知だけでは無理な部分があり、専門家の力を借りて対応したい」、「三役に権限を委譲し、意見具申を受け、経営陣としてマンパワーの充足に対応する」などの対応策が聞かれたという。
これまで国内で発生した医薬品の不正製造問題は、経営層をはじめとする組織の遵法意識の問題点として、コンプライアンス意識の社内全体での欠如、患者軽視の利益優先といった側面がある。改正薬機法の中では、これら現状を改善する方向性として、薬事に関する業務に責任を有する役員を法律上、明確に位置付けする「責任役員」が検討されている。
さらに法令違反などがあり、保健衛生上の危害の発生、拡大防止などで必要な場合には、行政側が責任役員の「変更命令」を行うことができる措置も定める方向にある。
薬機法改正、GMP省令改正では「正直者が馬鹿を見ないような制度にしなければならない」(厚労省関係者)との意見もある。今後、これまで以上に厳格化される形になるが、ガバナンスをどのように改善し、さらなる問題発生を防いでいくか、製薬企業の経営者や製造現場は、緊張感をもって臨む必要がある。