今年のお盆休みと国内外の民族大移動は終わった。実質賃金が上がらず、個人消費が振るわないと見られているが、夏休み中の海外旅行者数は過去最高を記録するようである。商売用語として「二八」(にっぱち)がよく使われるように、2月と8月は他の月に比べて物が売れず、飲食店に客が入らないとされてきたが、それは昭和や平成時代のことかもしれない。
令和の現在においては時期は関係なく、日本全国常に訪日客で溢れかえっているのが現状である。来月からのラグビー・ワールドカップ日本大会、来年夏の東京オリンピック・パラリンピックに向けてピークを迎えると期待されているが、その後の落ち込みを心配する声も聞かれる。
新聞にもネタが枯れる時期があり、株式・証券・相場用語と同じく夏枯れと呼ばれる。製薬企業や大学などが夏季休暇に入るのだから、致し方ないことである。
ところが、今年はお盆休み明けに大きなニュースが出てきた。消費増税に伴う薬価改定とドラッグストア業界の再編である。厚生労働省は、10月の薬価改定に伴う薬価基準を19日に官報告示した。消費税の度重なる延期によって変則の10月改定となったことは周知のことである。
内容は、薬価基準収載医薬品1万6510品目中、薬価が引き上げられるのは6121品目で、残りの1万品目以上は引き下げられるか維持される。2%の消費税アップ分として薬剤費ベースでプラス1.95%、薬価調査による市場実勢価改定等でマイナス4.35%、差し引きマイナス2.40%となる。
少し話題は違うが、今回の消費税10%への増税で国民が最も悩んでいるのが軽減税率の導入である。商店、コンビニ、スーパー、デパートの食品売り場などで商品を買う場合、イートインコーナーで食べるかどうかで税率が変わってしまう。レジでの対応が繁雑となることは明らかで、10月からの施行で混乱は必至だろう。
もう一つの大きなニュースは、ドラッグストアのココカラファインとマツモトキヨシホールディングスが経営統合に向けた協議に入るというもの。具体的な協議はこれからだが、経営統合が実現すれば売上高1兆円規模に達すると見られている。
製薬企業や医薬品卸は再編を繰り返して、今ではトップ卸企業の売上高は1兆円から3兆円に達している。いよいよドラッグストア業界も1兆円企業が続出してくるのか、今後の再編劇が注目される。
薬業界に限らず、市場環境や関連制度は常に変化している。数多の企業のうち、現在生き残っているのは、ほぼ間違いなく変化に応じて迅速かつ的確に対応した企業である。現場においては、日々の業務を抜かりなくやり遂げることも大事だが、経営側は、変化の兆しを敏感に感じ、将来を見通した事業展開へ舵を切ることが大切である。