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次のターゲットイヤーは2040年

2019年08月09日 (金)

 厚生労働省幹部の講演を聞く機会は多いが、最近は「2040年」というターゲットイヤーが強調されるようになってきた。40年は、団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者になる年だ。日本の高齢者人口がピークに達すると見込まれている。

 日本の人口は08年を頂点に減少に転じた。これから40年に向けて、働き手となる現役世代が大幅に減る一方、高齢者人口は増加する。世代間人口のバランスの悪さがますます顕在化する状況にある。

 医療費を含めた社会保障費の負担は増す一方、税収の大きな伸びは期待できない。この難局をいかに乗り切るか、将来の社会保障体制をどのように構築するかが、国の大きな課題になっている。

 少し前までは、団塊世代が75歳以上になる25年がターゲットイヤーになっていた。厚労省の政策として「25年までに地域包括ケアシステムを構築しなければならない」とのフレーズは繰り返し何度も聞いたことがある。

 国の方針を受け、病院薬剤師も薬局薬剤師も各地域で情報共有や連携強化に取り組んでおり、今後も進める必要があるが、国や厚労省の関心は、さらに先を見据えた政策展開に移っている。

 ここで薬剤師が注目すべきポイントは、医療・福祉サービスの改革である。働き手が減る一方、増加する高齢者に対応するためには、医療・福祉分野の生産性向上が欠かせない。「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」が5月に発表したとりまとめでは生産性向上の達成に向け、[1]ロボット・AI・ICT等の実用化推進、データヘルス改革[2]タスク・シフティング、シニア人材の活用推進[3]組織マネジメント改革[4]経営の大規模化・協働化――の4本柱の施策が示された。

 今後、厚労省の方針に沿って医療の改革が進められることになるが、薬剤師にも影響は避けられない。実際、ロボット・AI・ICT等の実用化推進として「オンラインでの服薬指導を含めた医療の充実」が明記された。他にも様々な業務に波及するだろう。

 業務のタスク・シフティングは、薬剤師にとってチャンスだ。厚労省は医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフティングについて、各職能団体のヒアリングを行っている。日本薬剤師会と日本病院薬剤師会は7月中旬に、薬剤師が実施可能な業務として医師の処方関連業務の支援・簡素化や分割調剤など7項目を提案した。

 一方、日本看護協会は同じヒアリングで、療養上の世話に必要な薬剤は看護師の判断で使用できるよう求めた。下剤など排便コントロールの薬剤、軟膏などスキンケアの薬剤、湿布や鎮痛剤など疼痛緩和の薬剤を例示している。

 こうした主張はむしろ、看護師ではなく薬剤師が展開すべきだ。絶好のチャンスを逃さないためにも、この機会に改めて薬剤師の職能の可能性を追求してほしい。



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