
10月26日に開かれた日本薬史学会2019年会
日本薬史学会2019年会が10月26日、岐阜県各務原市の内藤記念くすり博物館で開かれ、薬史学教科書シンポジウムをはじめ、特別講演と一般演題、市民公開講座が行われた。薬学出身者のみならず、製薬企業の現職やOB、薬局薬剤師などから幅広い研究発表の場となった。
シンポジウムでは、薬学における薬史学教育に関するアンケート調査結果が報告され、河村典久氏(金城学院大学)は「薬学史について、多くは薬学概論の中でしか講義されていない。過去の事実が現在の薬学にどのように影響しているかを考え、薬学の進むべき方向を正確に把握しておくことは必要。理念が確立されていれば、方向性を誤ることはなくなる」と述べた。
小清水敏昌氏(薬史学教科書作成実行委員長)は、「現状の薬学教育はモデル・コアカリキュラムに沿って学生に教えているため、教科書作成に当たってはモデル・コアカリキュラムと連携した構成、内容が求められる」と指摘した。
船山信次氏(日本薬科大学特任教授)は、薬学6年制の学生を指導している立場から、「この教科書で薬学とは何かという命題に明確な結論を提示できないか」と提起した。
森田宏年会長(内藤記念くすり博物館館長)による市民公開講座「認知症になりにくい食生活」には、一般の来場者が多く参加。また、一般発表では、若手研究者から「戦前期日本の女子薬学専門学校に関する研究」木村友香氏(早大教育学部)、「武田長兵衛商店の公益事業―尚志社と杏雨書屋を中心に」安士昌一郎氏(法政大学)などの発表があった。