米食品医薬品局(FDA)は11月25日、診療所において局所麻酔下で実施できる初めての鼓膜換気チューブ挿入システムを承認したと発表した。
耳の感染症は小児でよく見られる。米国立難聴・コミュニケーション障害研究所(NIDCD)の推計によると、3歳を迎えるまでに80%以上の子どもが1度は耳の感染症に罹患するという。治療として抗菌薬が処方されることが多いが、抗菌薬が無効である場合や抗菌薬を用いても感染症を繰り返す場合は、鼓膜に短いチューブを留置する外科的処置が推奨されることがある。小児の場合、耳チューブの挿入・留置はこれまで、入院設備のある病院や手術専門施設において、全身麻酔下で実施されてきた。
局所麻酔下チューブ(Tubes Under Local Anesthesia;Tula)システムは、成人および6カ月以上の小児の中耳炎治療における鼓膜換気チューブ留置術で使用されるチューブ・デリバリーシステムである。内科/耳鼻咽喉科の診療所において局所麻酔下での施術が可能であるため、全身麻酔を回避することができる。本システムには、麻酔薬Tymbion、Tusker Medical社製の鼓膜換気チューブ、および鼓膜へのチューブ留置や麻酔薬投与に必要なデバイスが含まれる。Tulaシステムでは、小さな電流を使って、チューブ挿入前に局所麻酔薬を鼓膜に投与する。
承認は、小児患者222例を対象にTulaシステムの有効性を検証した研究データに基づいて行われた。手技的成功率は、5歳未満で86%、5~12歳で89%であり、最も多く報告された有害事象は、施術中の不適切な麻酔であった。
FDAの下部組織である医療機器・放射線保健センター(CDRH)のJeff Shuren氏は今回の承認について「再発する耳の感染症に苦しむ患者に、全身麻酔を必要としない治療の選択肢を提供するものである。毎年、何百万人もの小児が耳の感染症に罹患していることを考えると、この感染しやすい患者集団に対して安全かつ効果的な治療法が使えることは重要である」とコメントしている。
Tulaシステムは、6カ月未満の小児および局所麻酔にアレルギーを示す患者に対して用いることはできない。また、鼓膜穿孔など鼓膜に既存の問題がある患者にも禁忌である。
なお、承認はTusker Medical社に対して与えられた。(HealthDay News 2019年11月26日)
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https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-system-delivery-ear-tubes-under-local-anesthesia-treat-ear-infection