米食品医薬品局(FDA)は11月8日、定期的な赤血球(RBC)輸血を要するβサラセミアの成人患者に対する貧血治療薬として、luspatercept-aamt(ルスパテルセプト;商品名Reblozyl、日本国内未承認)を承認したと発表した。
βサラセミアは、「クーリー貧血」とも呼ばれ、全身の細胞に酸素を運ぶ赤血球中のヘモグロビン産生が低下する遺伝性の血液疾患だ。ヘモグロビン値が低く、全身の酸素不足や貧血、疲労などの合併症を引き起こす。また、複数回にわたる輸血は鉄過剰につながり、多くの臓器に影響する可能性がある。そのため、患者は生涯にわたりRBC輸血を受け続け、鉄過剰への治療も行う必要がある。
FDA医薬品評価研究センターの抗がん剤承認審査機関(Oncology Center of Excellence;OCE)のディレクターで、腫瘍疾患部門の部長代理を兼任するRichard Pazdur氏によれば、Reblozylは、βサラセミアの成人患者の輸血回数を減らすのに役立つ初めての承認薬であるという。同氏は「今回の承認は、希少患者により早く新薬を届け、治療の前進に寄与した一例となるものだ」と説明している。なお、同薬は、3週間に1回の皮下注射で投与し、用量は1mg/kgで開始することが推奨されている。
今回の承認は、RBC輸血を要するβサラセミア患者336人を対象とした臨床試験の結果に基づいてなされた。対象患者336人中112人の患者にはプラセボが投与された。その結果、輸血量が33%以上減少した患者の割合は、プラセボ群では4.5%だったのに対して、Reblozyl群では21%と大幅に高かった。これは、Reblozylを服用している間、12週間連続して必要とされる輸血量を減らせることを意味するという。
一方、Reblozylを服用した患者では、頭痛や骨痛、関節痛、疲労、咳、腹痛、下痢、めまいなどの副作用が報告された。また、同薬を服用中の患者は高血圧を来す可能性があるほか、血栓症や血栓塞栓症のリスクが高まる可能性も示されている。そのため、FDAは、医師は、治療中の患者の血圧をモニタリングし、血栓塞栓性イベントの兆候や症状を注意深く観察するよう求めている。さらに、妊婦や授乳中の女性は、胎児や新生児に有害な可能性があるため、同薬を使用しないよう呼び掛けている。
なお、今回の承認は米Celgene社の申請に対して決定された。(HealthDay News 2019年11月13日)
(参考情報)
Press Release
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-therapy-treat-patients-rare-blood-disorder