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重要な薬剤師の卒後研修体系化

2020年09月25日 (金)

 日本学術会議は、薬学委員会に設置した薬剤師職能とキャリアパス分科会が策定した提言「持続可能な医療を担う薬剤師の職能と生涯研鑽」を発表した。薬剤師職能の方向性や、その実現に必要な社会システムのあり方をアカデミアの立場から示したもの。過去の提言に続き、今回の提言でも改めて卒後の初期臨床研修や専門領域の研修を体系化することの重要性が強調された。

 医師では、卒後2年間の初期臨床研修が必修として公費で実施され、専門医の育成も日本専門医機構が標準的な考え方や方法で取り組んでいるのに対し、現在の薬剤師の卒後研修体系は脆弱で、発展に向けて改善の余地が大きい。

 どの専門職でも同じだが、薬剤師も大学の6年間の教育で職能発揮に必要な能力が全て身に付くわけではない。大学で身に付けた基盤能力を、社会に出て経験を積みながら磨き続けることで、初めて薬剤師の職能を発揮できる。

 こうした背景を踏まえ、提言には「卒前・卒後の教育に関わる関係者が目的意識を共有し、調和のとれた教育プログラムを提供する必要がある」との文言が盛り込まれた。

 卒後初期臨床研修については「薬剤師資格を取得した新人薬剤師に対して卒後研修を課すことが望まれる」とし、「卒前教育の方向性を踏まえて薬剤師レジデント制度のあり方を検討する必要がある」と求めた。

 現在、薬剤師レジデント制度を運用している施設は少ない。育成プログラムも各施設が独自に設計しており、標準化されていない。レジデント制度をどのように広げ、標準化を図るかが当面の課題だ。

 一方、専門領域の研修としては、関連学会や職能団体によって多様な領域別認定・専門薬剤師制度が構築されているが、乱立と見られてもやむを得ない状況にある。提言はここにメスを入れ、「国民から理解されるよう名称の整理や認定基準の整合を図ると共に、制度の質保証の仕組みを検討する必要がある」とクギを刺した。

 様々な認定・専門薬剤師制度が薬剤師の意欲や資質の向上に役立っているのは間違いない。今後必要なのは、質が保証された足並みが揃った制度として、社会に組み込まれるように個々の利害を超えて全体の調和を図ることだ。

 日本学術会議だけでなく、厚生労働省も卒後の薬剤師の育成に注目している。2019年度から厚労行政推進調査事業費補助金による3カ年の「薬剤師の卒後研修カリキュラムの調査研究」が進んでおり、今年度から厚労科学研究費補助金による3カ年の「国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究」が始まった。

 対人業務の推進など、薬剤師に求められる役割は変化している。それに応えられる資質を育む仕組みをどのように構築するのか。関係者で課題を共有し、一丸となって取り組んでもらいたい。



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