CROを中心に事業展開していた富士バイオメディックスは14日、東京地方裁判所に民事再生法の手続きを申請し、財産の保全命令を受けた。負債額は218億3000万円。
同社は、1984年10月に病理組織の研究・検査を目的として設立され、CRO事業を中心に事業を展開してきた。2005年8月には、名古屋証券取引所「セントレックス」に株式上場し、06年にはアンチエイジング事業に本格進出。相次ぐ新会社設立と買収により、急激な事業拡大を進めてきた。
しかし、これらの事業で予定していた利益が得られず、買収資金や金融機関からの借入金が21行から約150億円に膨らみ、資金繰りが悪化した。9月末には、多額の未収入金の回収が不可能となり、さらに未収入金の存在に疑義が生じたことから、今月末の資金調達のメドが立たなくなり、今回の申請に至った。
32・58%の株式を保有する筆頭株主の東邦薬品は14日、出資先の富士バイオメディックスが東京地方裁判所に民事再生手続きの申し立てを行ったことを受けて、2009年3月期の第2四半期累計期間において、有価証券の減損処理による特別損失を計上する見込みだと発表した。同社が取得した株式価額は55億8600万円だが、特別損失額を含めた上半期の業績については、本件による影響を見極めた上で公表する予定。東邦薬品は、「業務提携関係があるので、引き続き業務上可能な限り応援をしていく」とコメントしている。
また同日、東邦薬品は富士バイオメディックスの完全子会社で、調剤薬局81店舗を持つ「富士ファミリーファーマシー」(千代田区)の全株式を取得して完全子会社化した。民事再生手続きによって業務停止による社会的影響を考慮して、調剤薬局事業の継続を最優先し、債権等を対価として東邦薬品が引き受けた。
日本CRO協会・中村会長が見解
日本CRO協会の中村和男会長は15日、富士バイオメディックスの民事再生手続きに関してコメントを発表し、「CROビジネスの業績とは関連がない」との見解を明らかにした。
「富士バイオメディックスのCRO業務は極めて好調であり、利益率も高いと認識していたので、民事再生手続き開始の報道には大変驚いている。報道によれば負債は事業の多角化等に起因したとあるので、CROビジネスの業績とは全く関連がないと考える。当協会会員の売上は年間10%強の成長を続けており、来年以降も同様の成長を見込んでいる。医薬品開発におけるアウトソーシングの拡大に伴い、世界的にもCROビジネスは成長しており、日本のCROビジネスは、その中でも好調に推移し続けると考えている」