製薬オンライン(オンウェーブ株式会社)
キャリアアドバイザー
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2019年後半に中国で端を発した新型コロナウィルスにより世界各地でロックダウンが実施され、社会的・経済的影響を引き起こしている。特にデジタル化に向いていない事業では軒並み大幅な需要減少が生じ、実体経済にも大きな影響を与えている。実体経済の悪化に伴い企業の倒産・解雇・雇止め・賃下げ・賞与減が相次ぎ、転職市場にも大きな影響を与えている。直近一年間の有効求人倍率を見ると、2019年9月には1.58だったものが、2020年9月には1.03まで落ち込んでいる。
弊社は製薬業界に特化した有料職業紹介事業を行っていることからこの流れは製薬業界の転職市場にも影響を与えているかを検証する。本レポートでは転職希望者の登録データ・求人のデータを見ながら考察する。
転職希望者から見る
昨年の1~9月と、今年の1~9月で転職希望者数を比較するとおおよそ1.4倍になっており、転職希望者が増えていることが分かる。
年齢別の傾向
まずは年齢別に転職希望者を分類する、するとTable.1の様になり、昨年と比較して20代の若い方の転職希望者が増えていることが分かる。これについては肌感覚になるが、以前と比較して他業種から製薬業界にチャレンジしたいという若い方の割合が増えているように感じる。20代の転職希望者にお話を伺うと多くの場合“安定した環境で働きたい”と言われることが多く、実際今年5月くらいまでは派遣社員で派遣先からの契約満了などの伴う登録者が多かった。
だが夏以降になるとそういった方の登録の割合は減少し、40~50代の転職希望者割合が増えている印象がある。この年代の方では早期退職制度の利用を検討・応募されている方が非常に多く、その理由は営業人員削減や、部門の閉鎖によるものが見られた。
このことから考えると2020年前半は若年の方にとっては同年代のライバルが多くいる状況で転職は難しい環境だったが、夏以降はむしろ早期退職募集企業が増えたことで、経験者の方にとって転職が難しい環境になりつつある。
職種別の傾向
では転職希望者の経験を職種別に見てみるとどうだろうか。製薬業界では研究・開発・営業・マーケティング・管理部門など多くの職種があるが、1種類の職種を除いて登録していただいた転職希望者の経験職種に昨年と今年では大きな違いは見られない。
その“ある職種”とはMRのことで、Table.2に示す通り現職でMR、あるいは過去に1年以上MRを経験されてきた人の割合が非常に多くなっている。これは多くの製薬メーカーでMRの人員削減を行っていることが影響していると考える。
また、さらに今後製薬メーカーはMR活動を外部に委託する傾向が強まることが想定されるため、メーカーに拘ってMRの転職を考える人にとっては逆風になることが予測される。臨床開発モニターについても、製薬メーカーは外部に委託することが増えているので、こちらについてもメーカーに拘っての転職をする方は転職活動が長引く可能性があると覚悟したほうが良さそうだ。
求人データから見る
前述の通り、日本国内での有効求人倍率は昨年度と比較して非常に下がっているのが印象的だが、製薬業界にも影響はあるのだろうか。
弊社のデータベース上にある求人は8000件以上に上るが、昨年度と比較して求人案件数の減少はほとんど見られない。
緊急事態宣言下の状況ではコロナ対策で採用活動を中止・延期される企業も多く存在したが、宣言解除に伴い徐々に例年の求人数に戻っていったと感じる。
上記の通り求人数については大きな影響はないが、緊急事態宣言の前後で大きく変わったことが1つある。それはオンライン面接可能企業が増えたことだ。従来は新卒就活、転職活動共に対面での面接が基本となっていたが、現在では製薬業界の大半でオンライン面接が実施されている。
これまでは面接のための移動時間が必要になり、交通費や時間のコストが大きかったが、オンライン面接の増加に伴い、そういったコストが減少し、転職活動がしやすくなる側面もあると考える。今後withコロナの状況からafterコロナに移行しても、おそらくオンライン面接は多くの企業で継続されることだろう。