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安心できるワクチン接種体制を

2020年11月27日 (金)

 新型コロナウイルス感染症ワクチンの第III相試験で好結果が続々と発表されている。米ファイザーと独バイオNテックが共同開発中の「BNT162b2」、米モデルナの「mRNA-1273」は9割超の予防効果を示した。英アストラゼネカと英オックスフォード大学が共同開発する「AZD1222」も、健康成人で重篤な有害事象が報告される足踏みもあったが、平均で7割の被験者に有効性が確認された。

 臨床試験で好成績が示されたことは大きな前進となろう。ファイザーは米国で緊急使用許可申請を行い、来月中旬にも米国でワクチンを供給できる可能性があるとした。

 日本政府は、来年前半までに全ての日本国民に対するワクチンの供給量を確保する方針を打ち出しており、これらの新型コロナウイルス感染症ワクチンを開発する企業と、承認取得を前提に日本での供給を受けることで基本合意を締結しており、ワクチンの確保にもメドがついた格好。

 ただ、日本での承認審査は慎重な対応が必要となる。米国の緊急使用許可は、通常の医薬品承認とは異なり、特例として患者に未承認医薬品の使用を認める措置だ。正式な承認ではない。

 新型コロナウイルス感染症治療薬「レムデシビル」は、米国の緊急使用許可のもと、海外臨床試験結果のみで国内で販売できるようにする特例承認制度を適用した。世界保健機関(WHO)が行った臨床試験では死亡率の改善効果が認められず、新型コロナウイルス感染症の治療ガイダンスでレムデシビルの使用を「推奨しない」と勧告した。

 FDAとWHOでレムデシビルの有効性に関する見解が割れているように、承認審査時には極めて限定された臨床試験データだけでリスクベネフィットを評価するのには限界がある。

 特に健康な人に接種するワクチンについては、治療薬よりも厳格に接種によって得られる利益と不利益を評価しなければならない。海外の知見だけではなく、日本の規制当局として独自判断も求められてくる。

 薬害オンブズパースン会議は、新型コロナウイルス感染症ワクチンの導入について、「政治的な目標によってではなく、科学的な評価を基礎に行われるべき」とする意見書を出した。条件付早期承認制度や特例承認制度の適用についても、日本人の検証的試験が必須とし、「適用すべきではない」と訴えた。ワクチンに期待する人たちが多い一方で、副反応など不安に感じる人たちも多い。ワクチンを承認する場合は科学的根拠を国民にも理解できるよう丁寧な説明を行うべきである。

 新型コロナウイルス感染症ワクチンの無料接種化を柱とする予防接種法改正案が衆議院本会議で可決され、参議院に送られた。国民にはワクチン接種の努力義務が課されている。安心して接種を受けられる体制を望みたい。



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