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薬局が果たす重症化防止の役割

2020年12月04日 (金)

 今年の新年会などでは東京オリンピック・パラリンピックイヤーに因んだ明るい経済の方向性を示すあいさつが多く聞かれたが、その期待は新型コロナウイルスの感染拡大で一転した。

 4月の緊急事態宣言の発出以降、新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う外出自粛や店舗営業時間の短縮要請、インバウンド需要の大幅減少などで日本の経済活動は急速に落ち込んだ。

 今や定着しつつある「ウィズコロナ」時代の中で、経済活動を余儀なくされているのが現状だ。

 こうした中、政府は経済的ダメージの大きい観光業や宿泊、飲食・物販業を支援することを目指した「GoToトラベル」などの施策を7月末からスタート。一定の経済効果は見られたのだろうが、逆にこのところの感染拡大の呼び水になったとの懸念も示されている。

 東京都の小池百合子知事は感染拡大を受け、「GoToトラベル」の都内発着分について、重症化リスクが高いとされる65歳以上の高齢者や糖尿病や高血圧などの基礎疾患を抱える人を対象に、17日までの利用自粛の方針を打ち出した。感染予防対策と経済活動の両立に苦心する様子がうかがえる。

 厚生労働省によると、11月27日時点で国内では全人口の0.1%に相当する約14万人が新型コロナウイルス感染症と診断されている。ただ、感染していても症状が現れず医療機関を受診しない人もあり、ここ数日の第3波の影響で感染者の実数はさらに跳ね上がっているだろう。

 新型コロナウイルス感染症と診断された人のうち、重症化や死亡に至る割合は年齢により異なる。

 6月以降に診断されたケースでは重症化割合は約1.6%(50歳代以下は0.3%、60歳代以上が8.5%)。また死亡する人の割合は約1.0%(50歳代以下は0.06%、60歳代以上は5.7%)となっている。

 一方、重症化リスクとされている基礎疾患は、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満とされている。これらは新型コロナウイルス重症化患者の背景因子から導かれたものと見られるが、糖尿病や高血圧については、薬剤で数値がコントロールされていれば重症化リスクは軽減できると推察される。

 その意味では、重症化リスクを抱える患者の服薬アドヒアランスのフォローなど、薬局・薬剤師が果たせる役割は少なくない。今年は、受診抑制に伴う処方箋応需枚数の減少などによって、薬局の経営環境が悪化している現状もある。

 医療提供施設である薬局は、一般生活者が新型コロナウイルス感染症を「正しく恐れる」ための情報を得られる場所として十分に機能することにより、感染拡大や重症化を抑制できるような活動につながることを期待したい。



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