喜谷社長「若年層へ訴求図る」
女性薬として江戸時代から約300年間、多くの人々に親しまれている「喜谷實母散」がこのほどリニューアルした。効能・効果がひと目で分かるパッケージに変更され、味も飲みやすくなった。同製品を販売するキタニの喜谷和夫社長は、「伝統のある製品をこれからの時代も残していきたい」と語る。
喜谷實母散は、日本の医薬品の中で最も古い商標を持つ第2類医薬品で、11種類の生薬の配合により、生理痛や更年期障害、冷え症など、女性特有の諸症状に効果がある。キタニが製造販売を担ってきたが、漢方薬メーカーのウチダ和漢薬と製造委託契約を締結し、ウチダ和漢薬が製造販売元、キタニが販売元として2月からリニューアル品を展開している。
キタニは、今年で会社創立から71年目を迎えた。製造拠点も兼ねていた本社(東京都目黒区)の周り一帯は、かつては工場が集積していたが、今は住宅地だ。喜谷氏は、「この辺りにあったメーカーの工場もほとんどが移転し、マンションに切り替わった。私がキタニに入社した18年前から、既にわれわれの建物や設備も老朽化しており、製造委託先を探していた」と説明する。
リニューアル品では、實母散を知らない若年層にも訴求していく狙いだ。「戦前の日本では、一家に一つ喜谷實母散が置いてあり、おばあちゃんが服用し、お母さんにも勧め、娘にも勧めて受け継がれていったが、今は核家族の時代。特に若年層では、實母散の存在を知らない場合が多い。ドラッグストアに置いてあっても何の薬なのか、読み方すらも分からない」と述べ、こうした現状を打破していきたい考えを示す。
新パッケージでは、竹柄の縁など、最古の商標に相応しい伝統的なデザインはそのままに、月経不順や血の道症といった効能・効果に加え、「手足が冷える」「汗をかきやすくなった」「疲れやすくイライラする」といった諸症状も一目で把握できるようにした。アルファベットで「KIDANI JITSUBOSAN」と読み方も分かる表記にした。
製品の内容については、生薬の成分や配合は変更していないが、ウチダ和漢薬と提携して、味の分析を行い、従来品よりも飲みやすい味に改良した。ティータイプの煎じ薬として、「漢方特有の香りの中に、重厚感のある甘味を含んだ香りもあり、さわやかな余韻を楽しめるようになった」という。
ホームページもリニューアルし、インターネットでの訴求にも本腰を入れる。喜谷氏は「更年期障害の薬剤というイメージが強く、40代以降の層の服用が多いが、産前産後の精神不安やいらだちといった血の道症の効能・効果もあるので、20代の方にも服用してほしいと思っている。症状で検索して薬を買う人も多いので、若年層にもわれわれの製品が目に付くようにしたい」と展望を語る。
今後は、新しい時代に合わせて伝統薬の情報発信に注力していく。「時代が変わっても生き残れるようにいろいろと試行錯誤している。ドラッグストアにとっても魅力ある製品を目指している」と強調する。