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【第54回日薬学術大会】始まった新たな薬局認定制度 地域に根ざした薬局構築 みどり薬局(台東区)

2021年09月13日 (月)

第54回日本薬剤師会学術大会

みどり薬局。高齢者や障害者でも来局しやすい出入口

みどり薬局。高齢者や障害者でも来局しやすい出入口

 みどり薬局(東京都台東区)は、蔵前地域に根ざした薬局として、子供と保護者を中心とした患者の相談に応じる薬局の構築を心がけてきた結果、認定制度が始まった8月1日付で地域連携薬局の認定を受けた。子供が服薬しやすい方法のレクチャーや保護者間の交流の場づくりなどに取り組み、コロナ禍でもオンラインで実施。厳しい環境下でも、地域住民に貢献できるサービスの提供に取り組み続けている。

2016年に健サポ薬局認定‐患者のプライバシー配慮

 東京都では現在、約80軒の薬局が地域連携薬局として認定されており、子育て世帯が多い台東区蔵前で、地域住民の健康相談に応じてきたみどり薬局も制度がスタートした8月1日付で認定を受けた。

管理薬剤師の坂口眞弓氏

管理薬剤師の坂口眞弓氏

 みどり薬局は開設から74年間、「住み慣れた街で最期まで楽しく健康に暮らすを応援する」を理念に掲げ、地域住民に寄り添う薬局づくりに努めてきた。既に2016年に健康サポート薬局の認定を受けていたため、坂口氏は「サポート薬局の要件を満たしているので、地域連携薬局の要件もクリアできるのでは」と考え、同区内で経営する他2店舗と共に都に申請を提出。全店舗が制度開始日に認定を受けている。

 地域連携薬局の認定基準として、患者のプライバシーに配慮した服薬指導ができる構造を求めているが、みどり薬局でもパーティションで仕切った相談スペースを設置したほか、他の相談場所も患者同士で視線が合わないよう考慮した配置にしている。

 出入り口は段差のないフラットな構造なので、高齢者や障害者などが利用する車いすでもスムーズに来局できる。台東区社会福祉協議会の「車いすステーション」に登録しているため、同区の住民、在勤者が短期間の病院への通院や買い物の際に、無料で車いすを貸し出している。

パーティションで仕切った相談スペース

パーティションで仕切った相談スペース

 一方、坂口氏は構造要件として無菌調剤室の設置が求められたことへの対応に苦慮したと語る。薬局内のスペースが限定されている反面、台東区ではクリーンベンチだけでなく、ベンチを囲むクリーンルームの設置も必須としている。同一建物内の別フロアーに設置することも要件を満たさないと判断され、保健所など行政と相談した上で、必要時に他薬局の無菌調剤室を紹介するように契約した。

 認定基準では、過去1年間に薬剤師を地域包括ケアシステムの構築に資する会議に参加していることを求めており、市町村または地域包括支援ケアセンターが主催する地域ケア会議等への参加が不可欠とした。

 ただ、坂口氏は「地域ケア会議は中々参加する機会がなく、難しい」として、みどり薬局は医師、看護師等に同行して患者宅を訪問する在宅療養管理指導に取り組んでいるほか、介護ケア専門員が主催するサービス担当者会議にも参加しているため、これらで要件を満たした。在宅療養では、近隣の患者宅7~8軒に老人ホーム入所の20人ほどを対象としている。

 地域連携薬局に求められる他の要件について、坂口氏は「達成が難しいと感じたものは特にないが、申請書類の作成は手間取った」とし、再提出を求められた薬局があったことも聞いているという。

地域住民交流の場を提供‐コロナ禍でもウェブで代替

 近隣に一般小児科クリニックと耳鼻科クリニックがあるため、来局者の7割ほどを小児患者が占め、子供と保護者に向けたサービスの充実を図っている。待ち時間で子供が飽きないよう、店内におもちゃや絵本などを揃えたコーナーを設置。乳児用の経口補水液、子供の服薬を補助する服薬ゼリーなども販売している。

 乳幼児の母親同士で子育ての悩みを共有する場を無料で設けたり、子供が上手く服薬できる方法を薬剤師がレクチャーするなど、地域の保護者間のコミュニケーションを促す役割も担ってきた。夏休みの子供向けに、一日薬剤師体験や理科実験教室も実施している。

 終業後には、様々な疾患を持った人や、障害のある人をゲストに招き、テーマを設定した上で地域住民や行政、医療者、薬学生と自由にディスカッションする「薬局カフェ」も薬局内で開いていた。

 しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、これらを対面で実施することができなくなった。坂口氏は、「コロナ禍で保護者の交流が難しくなっている。子ども家庭支援センターなどで子供の遊び場を作るといった行政が保護者を孤立させない取り組みも今はできないので、ウェブで代替して交流の場を提供している」と語った。

SNS等で情報を発信

 また、新型コロナウイルスに関する根拠のない情報が流布していることを危惧し、医学的エビデンスに基づいた情報発信もSNSで行った。ワクチン接種後、薬局スタッフの半数に発熱が見られたなどの情報も薬局内に掲示している。

 一般国民へのワクチン接種開始後、予約方法や副反応に関する問い合わせが多く、近隣の接種会場の紹介も行っている。解熱剤の需要も伸びているため、販売状況を薬局内で公表した。

 地震など災害発生時に備え、浅草薬剤師会の「災害時協力薬局」に加盟している。災害発生から48時間以内に降圧剤など慢性疾患治療薬を持ち出せなかった住民に、処方箋なしでも約50種類を対象に2日分を無料で提供する。

 成人向けの一般用医薬品、衛生用品、介護用品の品揃えも充実させている。ただ、坂口氏は22年から延長されるセルフメディケーション税制について、「控除制度を知っている人は少なく、PRしても販売数が伸びにくいのが現状だ。社会保障費の現状を説明するなどして患者のリテラシーをどう上げるかが薬剤師の課題」と率直に語った。

 昨年11月からは、緊急避妊薬(アフターピル)の取り扱いも始めた。処方箋なしの販売をめぐり、国の専門家会議で検討が始まっているが、坂口氏は「女性が自分の身を守るという意識の点で日本は遅れている。薬剤師は同剤に関する知識を持っているので、市販化すべき」とした。



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