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【薬局業務の効率化と質的向上を目指して】オーエス安部山薬局(福岡県北九州市)

2006年08月02日 (水)

スキャナーで自動的に読み取り、処方せんのデータ入力を省力化

窓口で受け取った処方せんをスキャナーに通し情報を読み取らせる

窓口で受け取った処方せんをスキャナーに通し情報を読み取らせる

 レセコンへの処方せんデータ入力は大変な作業だ。特に新規患者の場合は、処方せんに記載された様々な情報をキーボードを叩いて一つ一つ正確に入力する必要があり、労力を要する。システム化によってこうした問題の解決に取り組んだのが、今年4月に開設されたオーエス安部山薬局だ。スキャナーで読み込んだ処方せん情報をOCRでテキストデータ化し、レセコンに自動的に入力するシステムを開局当初から導入。入力業務の省力化に役立っているという。

IT化で過誤防止

 オーエス安部山薬局は、近隣の北九州総合病院(360床)の院外処方せん発行本格化に合わせ、今年4月に開局した。道に沿って横に長い構造が特徴だ。広い店舗面積を生かし、待合いスペースと調剤室、スタッフエリアはゆったりとした造り。店内に入ると、キッズスペース、車椅子の患者に対応した投薬窓口やトイレ、個室状の相談コーナーが目を引く。そして、待合いスペースの一角には自動体外式除細動器(AED)を設置。この点も特徴的だ。

薬局のスタッフ(中央が柏田匡広氏)

薬局のスタッフ(中央が柏田匡広氏)

 薬局のスタッフ数は6人の薬剤師と5人の事務員で計11人。来局するのは十数診療科からなる北九州総合病院の患者が多い。それだけに「様々な疾患の患者さんが来られる。てんかん外来や膠原病外来などもあり、それらの患者さんへの対応も求められる」と管理薬剤師の柏田匡広氏は言う。

 できたばかりの薬局だけあって店内は真新しい。薬局内のシステム化、IT化も進んでいる。

 散剤の瓶に貼り付けられたバーコードを活用して薬品の取り間違いを防ぎ、ネットワーク化された電子天秤で秤量間違いをチェックする調剤過誤防止システム。小児患者が多く、安全性を高めるために導入した。錠剤の一包化を自動的に行う錠剤分包機も備える。処方せん受付窓口に2台、調剤室に1台、合計3台のレセコンを設置。これらの機器とレセコンは回線で結ばれている。

コミュニケーション能力を磨く

 受付窓口の2台のレセコンの間にはスキャナーが1台置いてある。これが、処方せんの情報を自動的に読み取る装置、ユヤマの「よみとり君」だ。

 事務員は窓口で患者から処方せんを受け取るとまず最初に、このスキャナーに通す。そうすると、処方せんに記載された文字や数字がOCR機能によってテキストデータに変換され、レセコンに自動的に入力される。事務員はその間に処方せんをコピーし、原本を調剤室に送る。その後、レセコンに入力されたデータに間違いがないかどうか、処方せんのコピーと見比べながらチェックする。

道に沿って横に長い構造が特徴的なオーエス安部山薬局

道に沿って横に長い構造が特徴的なオーエス安部山薬局

 処方せんに記載されている情報は意外に多い。患者氏名、生年月日、医療機関名、その所在地、保険医師名、交付日、公費等負担者番号、保険者番号、処方薬の名称や規格、服用量、服用日数など多岐に渡る。

 レセコンへのデータ入力は、処方せんを見ながら事務員が直接キーボードで打ち込むのが一般的だが、特に新規患者の場合は、これらの情報を全て手で入力する必要があり大変だ。応需枚数が多かったり、1枚当たりの処方薬が多かったりすれば、さらに手間がかかる。

 病院薬剤師として約10年の経験を積み、同薬局の開設にあたり準備段階から入社した柏田氏は、まさにこのことを危惧していた。病院の規模からいっても応需枚数は多いと想定され、「内容の濃い」処方も少なくないと見込まれたからだ。

 この問題を解決するため柏田氏は当初、処方せんに印字された2次元バーコードから情報を読み取るシステムの導入を検討していた。しかし、病院側のシステム変更が必要で、その体制が整いそうになかったことから、次善の策として雑誌などで目にした「よみとり君」に興味を抱き、導入を決定したという。

 実際に使ってみた感想として柏田氏は「全て正しく読み取るわけではなく入力後のチェックが必要だが、それでも手で入力するよりは格段に早い。内容の濃い処方せんでは手で打ち込むのは大変だが、この装置があるおかげで事務員のストレス軽減や省力化が図れていると思う」と話す。

 開局当初は、処方内容が濃い場合に「よみとり君」を使い、薄い場合には手で入力していたが、現在は「やはり入力が早く便利なので全ての処方せんで活用するようにした」(柏田氏)という。

患者満足度向上に工夫

 開局から3カ月余りが経過した。会社としても同薬局が第1号店だったため、開局当初は業務が混乱したそうだが、最近になって落ち着いてきた。

 柏田氏は、患者の待ち時間をいかに短縮するかに気を配っており、5分以内が目標。業務を効率的に行えるよう、スタッフの動線や各装置の配置、薬剤師と事務員の業務分担を少しずつ改良してきた。

 一方、「薬を早く出すだけだったら患者さんの満足度も小さいので、どれだけ気持ちよく帰ってもらえるかについても気を配っている」と柏田氏は強調する。待合いスペースに接客要員として事務員を1~2人ほど配置しているのはそのためだ。今後は薬剤師のコミュニケーション能力も磨きたいという。現在、薬剤師を募集しており、人員増を図りながら、こうした取り組みを進めたいとしている。



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