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“安心”できるGE業界再編を

2021年12月10日 (金)

 今月3日、国内トップシェアのジェネリックメーカーである沢井製薬を中核とするサワイグループホールディングス(サワイGHD)が、小林化工(福井県)の親会社であるオリックスと生産施設などの譲渡を受ける契約に合意したことを発表した。

 この1年間で、小林化工をはじめ日医工(富山)、そして長生堂製薬(徳島)といったジェネリック医薬品(GE薬)メーカーが相次いでGMPの逸脱などで、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく業務停止命令の行政処分を受けた。特に小林化工の場合、市場に出荷された製品を服用した患者が健康被害を訴えたことで問題が発覚。2人の死亡者を出すなど、GE薬の信頼を大きく失墜させたといえる。

 さらに、これら一連の不祥事は個別の企業の問題だけでは収まらず、各社の業務停止に伴うGE薬の供給不安の高まりから、医療機関等で在庫の抱え込みなども生じているようだ。そうした背景もあり、全国規模で供給が滞り、代替薬を製造するGEメーカー、さらには新薬メーカーにもその影響を及ぼしている。

 日本製薬団体連合会が先月公表した、今年8月末時点の医療用医薬品の「自社製造販売承認取得品目の出荷状況」の調査結果では、回答のあった218社の1万5444品目の2割に相当する3143品目が出荷調整や停止、欠品となっていることも判明している。これら、医療用医薬品の供給不安の収束の見通しが現時点では不透明な状況にある。

 サワイGHDの澤井光郎会長は会見で、「安全で高品質な製品を届けることが喫緊の課題」としながら、現在の供給不安の理由の一つとして小林化工の製造工場が停止していることを指摘し、「小林化工の製品を作る状況を維持していては稼働はあり得ない」と説明。今回の小林化工の医薬品製造に係る資産、従業員の譲受は「GE薬業界や当社の課題解決に貢献できる一つの策だ」と強調。譲渡完了後、1年の期間を経て、出荷を開始する計画という。

 今回の取り組みが、即、供給不安の解消につながるものではないだろうが、厚生労働省関係者からも、製品の供給不安でGE薬全体についての不信感が高まる中、改めて品質と安定供給面での信頼性回復に期待する向きもあるようだ。

 結果として、不祥事に端を発した形での企業再編のような格好になった。今後、GE薬の使用促進策のスタート当初から言われてきた「安定供給」「品質確保」「情報提供」をベースとして、患者や医療関係者が安心して選択できるGE薬を提供できる企業のみが存続していける業界になるべきだろう。



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