新型コロナウイルス感染症が経済にも影響を与える中、ドラッグストア業界は着実に成長を遂げている。その結果、ドラッグストア市場10兆円産業化という目標への到達は目前に迫り、2040年20兆円市場の構築といった展望も実現可能な数字と思える。
さらなる成長を見据えて、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)を中心に様々な戦略を打ち出し、取り組みを進めており、ますます目が離せない業態となっている。
主な大手ドラッグストア企業の中間決算の数字を見ても、売上高を伸ばしている企業が多い。新型コロナウイルスの影響は、店舗を構える立地などによっても差が現れているが、例えば郊外型の生活圏域に立地する小売店舗の多くは堅調な業績を達成している。ドラッグストアに関しては、調剤併設型や食品強化型など、日常生活でのドラッグストア店舗の持つ利便性を改めて認識した新たな客層を取り込むことで業績を伸ばしたとみられる。
さらにコロナ禍では、家などから近い距離でのワンストップショッピングを志向する人が高齢者層などを中心に増加している。調査会社の調査結果でも、そうした人が日常生活の必需品と医療関連品、食品が全て1カ所で揃うドラッグストアの活用法を見出したこと等が指摘されており、それが郊外型店舗を展開する企業の業績拡大にもつながっているようだ。
一方、新型コロナウイルスによって、世の中は大きく変わった。JACDSの池野隆光会長は今後を見据え、「知恵を絞って、世の中の大きな流れにドラッグストアがなっていくことを目指す」との考えを強調する。
成長戦略の一つに掲げられているドラッグストア調剤については、ここ数年、毎年10%程度の伸びを示し、20年度は1兆円を超えるまでに拡大した。調剤医療費全体に占めるドラッグストア調剤のシェアも約15%という状況になっている。25年度には、2兆円、シェア30%を目指すという目標を掲げているが、ドラッグストア調剤は今後も拡大することが見込まれ、その目標達成も現実味を帯びてくる。
具体的な拡大の背景として挙げられるのは、▽高齢者人口の増加(都市圏高齢者人口の顕著な増加)▽薬剤師の安定的確保▽大手を中心とした旺盛な新規出店・併設化意欲▽中堅ドラッグの参入――などである。
これだけの背景が揃えば、ドラッグストア調剤には非常に有利な状況だ。かつ、地域連携薬局の認定や在宅シフトへの対応管理者の能力・経験の向上など、調剤拡大に向けた課題も的確に捉えていることは、目標達成を強く後押しするのではないか。