日本製薬工業協会会長 岡田安史
2022年の年頭に当たり、謹んで新年のごあいさつを申し上げます。世界が新型コロナウイルスのパンデミックの脅威にさらされる中、日本ではワクチン接種が進み、また国民の徹底した感染対策により感染者数が抑えられ、収束の兆しも認められます。
しかし、オミクロン株の出現など世界の感染状況を見ると、まだ予断を許さない状況にあります。製薬産業としましては、新型コロナウイルスとの戦いに終止符を打つべく国産ワクチン・経口治療薬の開発に鋭意取り組むと共に、産官学で緊密に連携して次なるパンデミックに対する備えを着実に進めていきます。
昨年は製薬業界にとって大きな節目となる年でした。このたびのパンデミックから医薬品が安全保障上の重要な戦略資産であると認識され、6月に閣議決定された「成長戦略実行計画」では、ライフサイエンスは重要戦略分野と位置付けられました。
そして9月には、革新的創薬、後薬品、医薬品流通を政策ターゲットとする医薬品産業政策を、経済安全保障の視点を加え展開する「医薬品産業ビジョン2021」が厚生労働省から8年ぶりに発出されました。
製薬業界としてはビジョンの策定を歓迎すると共に、その期待をしっかりと受け止め、実現に全力を尽くしていきます。
日本から革新的新薬を絶え間なく生み出してしていくためには、ベンチャーやアカデミアの持つ有望なシーズを、産官学が協働して実用化へとつなげていく創薬エコシステムを構築することが必要です。
そのためには、ボストンのように起業家精神旺盛な人材が集い、最先端の研究を行うベンチャーが起業し、各種研究機関が有機的に連携するバイオコミュニティの形成、健康医療ビッグデータ基盤の整備、イノベーションを適切に評価する薬価制度の構築が必要です。特に、特許期間中はイノベーションの価値に基づく適切な薬価水準が維持され、そこから得られる収益をさらなるイノベーション創出へと再投資するサイクルを回していくことが不可欠です。
このことからも、特許期間中に薬価が維持される仕組みは製薬産業を支える生命線となります。製薬協と加盟各社はアンメットメディカルニーズを充足する革新的新薬を創出し、国民の健康寿命の延伸を支えると共に、日本経済の成長を牽引する基幹産業として尽力していきます。