日本製薬団体連合会会長 眞鍋淳
2022年の年頭に当たり、新年のごあいさつを申し上げます。わが国で初めて新型コロナウイルスの感染が確認されてから2年間が過ぎました。新たな変異種発生への懸念はあるものの、わが国ではこれまでのピーク時に比べて感染者数は大きく減少し、日常生活は回復しつつあります。
政府は昨年11月に、長期間の新型コロナウイルス感染症の流行で低迷する日本経済を回復するための「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を閣議決定しました。
この経済対策を構成する四つの柱の中に、ワクチン・治療薬の研究開発や生産体制の強化が掲げられました。さらに、ライフサイエンス分野は今後大胆な投資を行うべき重点分野とされ、経済安全保障の観点からも国内でのワクチン・治療薬の製造拠点整備の促進が謳われています。
このことは今般のパンデミックを通じて、ワクチン・医薬品が日常生活を維持するために不可欠な社会インフラとして国民に再認識された証左であり、私たち製薬産業に対して、国際競争を凌駕する研究開発力、生産技術力を磨いていかなければならないという使命を改めて指摘されたことに他なりません。
一方、新型コロナへの経済対策に膨大な国家予算が充てられ、国債債務残高が1000兆円を超える状況下、社会保障費への財政的な圧迫が懸念されます。特に毎年の社会保障費に求められた財源圧縮分のおよそ80%が薬価改定財源に依存されてきた過去6年間の状況から、財政ありきの薬価制度への切り込みは既に限界に達していると言わざるを得ません。
新型コロナウイルスに限らず、癌、希少疾患、認知症など、未だに有効な治療薬がなく、苦しんでいる患者さんは極めて多く、革新的な医薬品や医療技術の継続的な研究開発、高品質な医薬品の安定的な生産・供給が製薬産業への国民の期待であり、製薬産業の使命です。製薬産業は、国民の健康、強靭な社会インフラ、経済成長、経済安全保障のいずれにも大きく貢献できます。
新型コロナウイルスのパンデミックを経験した新たな時代において、従来のごとく製薬産業を社会保障制度に隷属する産業として近視眼的な財政事情のみで捉えるのではなく、長期にわたって日本を支える柱として位置付けていただけるよう様々な機会を捉えて関係者の皆様に訴えていきたいと考えています。