2016年に認定制度がスタートした健康サポート薬局は、かかりつけ機能に加え、一般用医薬品や健康食品、介護や食事などまで気軽に相談できる薬局とされ、安心して訪れやすい身近な存在として、地域住民の相談に乗る役割を果たすことも求められている。
ただ、認定薬局数の伸びは低調で、厚生労働省が当面の目標とした1万5000軒に対し、昨年12月31日時点の健康サポート薬局数は2842軒にとどまっている。制度開始から約4年で目標の2割に届かない状況だ。
全国各地で健康フェアやお薬相談会、検体測定室を活用した糖尿病予防、ロコモティブシンドローム予防の取り組みなど様々な活動が行われ、着実に広がりを見せているのは間違いないが、内閣府が昨年公表した「薬局の利用に関する世論調査」の結果では、健康サポート薬局を知らない人が9割に上った。
薬局から住民に「気軽に相談して下さい」と言っても認知されていなければ意味がなく、薬局での健康サポート活動で「良かった」と思える経験がなければ、なかなか広がらないだろう。実際、現場の薬局薬剤師からは「健康フェア以外にどんな活動をしたらいいか」との苦悩が聞かれていた。
3月に国内初の心電計付き血圧計が発売された。この新たなツールを薬局やドラッグストアで普及させ、心電図を測定するサービスを通じて心房細動の予防を目指す取り組みが注目されている。薬局で来局者に心房細動のリスクをチェックし、必要に応じて医師に受診勧奨することで、脳梗塞など脳血管疾患の予防につながる可能性があるからだ。
これまでも健康サポート機能の発揮に向けて多くのツールが活用されてきたが、どれも決め手にかけていた感は否めなかった。
今回、薬局やドラッグストアの健康サポート活動を支援してきたスマートヘルスケア協会が研修などを手がけ、薬局の新たな機能発揮の可能性を探る。
薬局での心電図測定の大きな意義は、自覚症状がないため気づきにくい脳梗塞など、死につながる危険を回避できることにある。心電図を測定し、リスクのある人には抗凝固療法を開始したり、専門医に紹介するなど、薬剤師が職能を発揮できる場面が広がるばかりか、国が求めている医師との連携にもつながってくる。薬局薬剤師が果たすべき役割のエッセンスが詰まったような取り組みとも言えるだろう。
死に直結する重大な結果をもたらす脳血管疾患が予防できるインパクトは、かつてなく大きい。「あの時、薬局で心電図を測定して良かった」と感じてもらえること、そして広く薬局が心房細動を予防したというエビデンスを社会に出すことが、健康サポート薬局のさらなる発展に寄与するはずである。