第55回日本薬剤師会学術大会
座長
日本薬剤師会常務理事
高松登
宮城県薬剤師会常任理事
高橋文章
新型コロナウイルス感染蔓延が2年半にわたって続いている。コロナウイルスは様々な系統へと変化しながら感染拡大を繰り返しており、今後も新たな変異株に対して警戒していく必要がある。しかし、人類もウイルスとの闘いにおいて様々な知見を得てきた。新型コロナワクチンの開発と接種の推進、複数回接種による重症化率や死亡率の低減効果、各ワクチンの特性や有効性、副反応の発生状況など、データの蓄積と解析が進み、より効果的で安全な使用方法が推奨されるようになった。本分科会では、コロナ禍における医療現場の状況を振り返ると共にワクチンの有用性を再確認し、薬剤師がワクチンや治療薬の普及並びに供給に対してどのように取り組むべきか、今後の治療薬等の展望も含めて議論し理解を深めていただきたい。
最初に日本大学医学部病態病理学系微生物学分野早川智教授から、医療の中でも特殊な状況下にあった産婦人科医の立場から、過去に大流行を引き起こした感染症と社会への影響を顧みると共に、コロナ禍での妊娠・出産の状況を「COVID-19から母子を守る:産婦人科医のできること」として妊婦への影響や治療薬の選択肢なども含めた観点から講演していただく。特に妊婦や胎児に関する感染対策上の注意点や、治療薬を選択する際のポイントなどは聞き逃すことはできない。
続いての演題は、日本薬剤師会川上純一副会長による「新型コロナワクチンの薬事承認から見たワクチンの有用性」についてである。これまで不活化ワクチンが製法の主流であったが、新型コロナウイルスワクチンでは、mRNAワクチンやウイルスベクターワクチンなどが新しい創薬技術によって誕生した。これらワクチンの薬事承認や特例承認の議論も踏まえてその有効性について概説いただくが、緊急承認の仕組みも含めた議論の経緯など興味深い講演である。
3演題目は、最前線で薬剤師が関わったワクチン・治療薬に係る取り組みの報告である。薬剤師が担う地域の医薬品提供体制を維持するため、感染防止対策を講じながら行った活動について、福岡県薬剤師会の事例を原口亨会長に講演していただく。普段の地域連携の重要性や積極的な薬剤師会の活動が迅速な取り組みにつながっており、参考にすべき報告である。各地域で「薬剤師による新型コロナワクチン・治療薬の普及・供給への取り組み報告」を参考にしていただきたい。
(高松登)