米食品医薬品局(FDA)は10月7日、生後2カ月未満の乳児の百日咳予防を目的として、妊娠第3期(妊娠25週以降)のBoostrix(Tetanus Toxoid, Reduced Diphtheria Toxoid and Acellular Pertussis Vaccine, Adsorbed;Tdap)ワクチンの接種を承認した。同ワクチンは成人用の百日咳、ジフテリア、破傷風三種混合ワクチンである。
百日咳は、米国では頻発する呼吸器感染症である。咳の後に息を吸うときにヒューという笛のような音(whoop)を立てることから、英語ではwhooping coughとも呼ばれる。重篤化した百日咳の症例、入院、および死亡のほとんどは、年齢的に小児期の百日咳ワクチンの接種対象とされていない生後2カ月未満の乳児で発生している。米疾病対策センター(CDC)によると、2021年に米国で報告された百日咳の全症例の4.2%を生後6カ月未満の乳児が占め、約31%が入院を要したという。妊娠中の母親にBoostrixワクチンを接種すると、母親の体内で抗体が増加し、それが胎児に移行する。
Boostrixワクチンは、2005年に10~18歳を対象に、破傷風、ジフテリア、百日咳予防の追加免疫としての単回接種がFDAにより承認された。その後、19歳以上にも対象が拡大されるとともに、同ワクチンの初回接種から9年以上経過した後の追加接種としても承認された。これらの承認には、妊婦への同ワクチンの接種も含まれていたが、それはワクチン接種者を守るためであった。これに対して、今回の承認は、生後2カ月未満の乳児の百日咳の予防を目的としている点でこれまでとは異なる。
承認は、妊娠第3期のBoostrix接種の有効性を検討した症例対照研究のデータの再分析に基づくもの。分析の結果、生後2カ月未満で百日咳を発症した乳児は108人(妊娠第3期に母親がBoostrixを接種していたのは4人)、百日咳を発症しなかった対照群は183人(同18人)で、母親が妊娠第3期にBoostrixワクチンを接種した場合、生後2カ月未満での百日咳予防の有効率は78%と推定された。
FDA生物製品評価研究センター(CBER)のPeter Marks氏は、「百日咳の予防方法としてはワクチン接種が最善の方法だが、生後2カ月未満の乳児に対する小児用百日咳ワクチンの接種は早すぎる。このワクチンは、乳児の疾患を予防する目的で妊娠中の母親の接種が承認された初めてのものだ」と述べている。
なお、Boostrixの承認は、グラクソ・スミスクラインバイオロジカルズ社に対して与えられた。(HealthDay News 2022年10月12日)
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https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-vaccine-use-during-third-trimester-pregnancy-prevent-whooping-cough-infants-younger-two