今週の日曜日、NHKスペシャルで太平洋戦争開戦70年の番組が放映された。なぜ、日本が当時国力が80倍も違う米国との戦争を決意したのか、なぜ国のリーダーたちは至極無謀な決定をしたのか、関係者のインタビューでその真意を検証した内容だったが、見終わって、ほとほとあきれたというのが率直な感想だ。
トップやリーダーのほぼ全員が、絶対に負けると分かっている米国との開戦に反対していたのに、誰一人としてそれを意見表明しなかった。そして、ズルズルと決定を先延ばしにし、結局、ハル・ノートを突きつけられて万事休す。国のリーダーは誰も賛成していない、やる気のない馬鹿げた戦争に突入したのだ。
もちろん、番組が主張するように、それまでに戦地で散った兵士や遺族、国民の感情に反することが恐くて、政治家も軍部も言い出せなかったという理屈も、ある程度理解できるが、本当に国家の将来、存亡を慮れば、リーダーとしての責任が欠如していたと言うほかないだろう。
番組中、絶好のタイミングで、外相が辞任する意向だというテロップが流れた。70年前から日本の政治は何も変わっていないと痛感した。
やっと政権交代という悲願を果たした民主党は、確かに自民党時代には見られなかった、いくつもの新機軸を打ち出してきたが、自らの内紛や失態によって、ボーダーラインまで支持率が低下し、国民から見離されては、当時の魅力も失せてしまっている。
民主政権の目玉の一つである「事業仕分け」に続いて、「規制仕分け」が行われた。12の対象テーマのうち医薬品業界関係では、OTC薬のインターネット販売、薬事承認審査の二つが仕分け議論の俎上に載った。
ネット販売に関して今回の評価結果では、対面販売の安全性が高いというエビデンスが明らかでないと指摘され、消費者の利便性と薬の安全性確保の観点から、丁寧な検討を行うべきとなり、審査手続きでは一層の透明化を求められた。
そもそも規制とは、国民と国家の安全性を確保するためのもの、という大義名分が存在する。そこに大鉈を振るう気概は評価できるが、事はそう容易ではない。特に医薬品産業は、他の商品を扱っている産業とは、特性が大きく異なっているからだ。
国内における他の産業より、また同じ産業でも諸外国よりも規制が厳しいことで知られているのが日本だが、それは、過去の薬害事件などから殊更に安全性を希求した結果である。表向きは、対面販売しなかった場合の副作用出現に懸念を示し、国民のためであるとのスタンスを保っているが、その実態は、70年前と同様に政治家も官僚も、誰も責任を取りたくはないという本音が透けて見える。日本国リーダーたちの根底にある、不変特有の姿勢に映る。
政権与党の民主党内でOTC薬のネット販売に反対する議連が発足し、業界では日本薬剤師会などが解禁反対の活動を強化する意向を示しているが、国民の中では賛否両論があるようだ。70年前とは政情は違うが、混迷する時こそ、国家を主導するリーダーたちには、きちんと将来を見極めた責任ある行動が必要であることは同じだ。