来年度の診療報酬・調剤報酬の改定はどうなるのだろうか。2年前の3・11東日本大震災直後ではあったが、中央社会保険医療協議会の焦点は、薬剤師の病棟業務を評価するのか否か、薬剤師が関わることで本当に医師等の負担が緩和され、医療安全や薬物療法の質が向上するのか――など、病院薬剤師の業務評価ではあるが「薬剤師」に南風が吹いていたといえる。
実際、2012年度改正では、勤務医の負担軽減等を図る目的で、新たに病棟薬剤業務実施加算(100点:週1回)の新設がかなった。
また、中医協での議論とは別だが、災害被災地でのボランティア薬剤師の活躍により、図らずも薬剤師・薬局、薬剤師業務が、災害医療においても欠かせないことが、次第に証明されたこともあったせいか、薬剤師や薬局の扱いは何となく、優しく、丁寧であったと記憶している。
結果、病院薬剤師の新たな評価と共に、後発品使用促進に対して一般名処方の導入や後発医薬品調剤体制加算の見直しなど、調剤報酬上・制度上でインセンティブが付与されることとなった。
ところが、その後の薬局業務は大きく進むこともなく、いま状況は一転している。まだ4月だというのに、中医協では薬剤師、薬局への批判の嵐といった状況。12年度改定を検証した結果、薬剤情報提供文書を用いた患者への口頭説明の割合が3割にとどまるなど、「薬剤師による情報提供が不十分」だから「後発品の使用促進が進まない」と、「薬剤師」の「責任問題」へと展開している。
アベノミクスでうわべ的に経済が回復傾向にあるとしても、わが国の財政赤字が大幅に改善され、さらには超高齢社会が回避され、医療費が減少することなどはあり得るはずがない。医療費(パイ)が増えない以上、その中での取り合いは至極当然のこと。
当然、膨れ上がった調剤医療費はターゲットになる。薬剤師の「責任問題」という「正論」の前では“手厚い後発品加算”叩きに反論もしづらい。少なくとも進まない理由が薬剤師・薬局だけに押しつけられないよう、この点は薬剤師代表の日本薬剤師会に頑張ってもらうほかはあるまい。
ところで支える現場が、後発品を勧める時、最大の売りが「安さ」のアピールでは情けない。改めて薬剤師が強調する点ではないのだろうか。
極論すれば「後発品は最新の製造・製剤技術で作られた薬」といえる。このことは患者、医師からも注目されない点だ。技術の違いがもたらす価値を把握し、切り替える際の有用情報として患者に提供する。また、工夫された剤形の中から、個々の患者状態に最適な薬を選べるのが薬剤師ではなかろうか。
せっかく得た権利を使い、本来の薬剤師らしい視点で薬を吟味し、その知識を生かせば、患者の服用ストレスの軽減、コンプライアンス向上、さらには医療費適正化にもつながる。交渉の巧さも必要だが、現場の「薬剤師だからこそ」の仕事が何より物を言うのかもしれない。