ハーブに精通した人材育成へ

金田氏
国の新型コロナウイルス感染症対策が緩和され、日本メディカルハーブ協会は対面とオンライン各々のメリットを生かした講座やイベント等の開催に取り組んでいる。全国の薬用植物園見学等で会員間の交流を深める一方、地方在住の会員の利便性も考慮して資格・検定の受験をオンラインに切り替えることも視野に入れる。来年以降、栽培や食以外のハーブ活用に精通した人材育成に関する資格講座の新設も予定している。
健康の維持・増進を目的にハーブに含まれる成分を使用する「メディカルハーブ」について、同協会では研究活動、安全性・有用性の正確な情報発信を行っている。専門家育成に向けた教育活動、ハーブ療法に関する資格認定も行っているが、コロナ禍の一時期は全講座をオンラインで提供し、在宅受験型のオンライン試験も試みるなど、感染対策として対面のイベント開催を制限していた。
しかし、対面実施に対する会員のニーズは強く、政府のコロナ対策が緩和されたことなどを踏まえ、対面実施のイベントを増やし始めている。
大学や製薬企業等が保有する全国各地の薬用植物園でハーブに触れ、専門家から活用方法を学ぶ薬用植物園見学会を再開。
毎回30~40人程度の会員が参加し、9月に北里大学、東邦大学の附属植物園、10月には埼玉県の「生活の木メディカルハーブガーデン薬香草園」、京都府の武田薬品京都薬用植物園で開催予定としている。
ハーブの特色を生かしたまちづくり推進を目的に、1992年から協会が全国各地で開催している「全国ハーブサミット」も9月に山梨県早川町で開く。講演会だけでなく、森林散策などを通じて会員の交流を深めるのが狙い。
対面イベントの再開を好意的に受け止める会員は多く、引き続き、会員のコミュニティづくりに注力していきたい考えだ。
一方、コロナ禍の経験を踏まえ、協会は講座や試験等に関する今後の実施方式について会員にアンケート調査を実施。その結果、「対面のみで良い」との回答は見られなかったとして、対面とオンライン、それぞれのメリットを生かした学習の提供を模索している。
金田太朗専務理事は、「感染者数が増加傾向にあった時期よりも対面の比率が上がったが、オンラインによる講座、検定試験は引き続き実施している。もう対面形式だけには戻れないのではないか」との見方を示す。
オンラインでは、学術成果の発表も行っており、今月に「メディカルハーブによる新型コロナウイルス抑制作用」をテーマに開催した。感染症分野の研究で最先端の取り組みを行っている研究者を招き、講演会とパネルディスカッションを実施。「抗新型コロナウイルス作用を持つメディカルハーブ探索」をテーマとした講演では、複数のメディカルハーブが抗ウイルス作用も持つことが報告されているとして、シナモンやバジル等に含まれる「オイゲノール」に顕著な抗コロナウイルス効果が確認されたことなどが発表された。
金田氏は、対面を原則としていた受験形式も再考する必要があるとし、「地方在住の会員に受験のためだけに来場を求めるのは厳しい。コロナ禍以前はそれが受け入れられていたが、受験会場を一つにまとめるメリットは協会側にもないので、会場かオンラインのどちらにするか引き続き検討したい」とした。
資格関連では、「エコロジカルハーバリスト」の育成講座を立ち上げ予定としている。ハーブを育てる、食べる以外に、花束や装飾品として活用するなど「クラフト」としてのハーブに精通した人材育成を目的としており、年内に講師を養成した上で、来年以降に開講予定だ。ハーバリストが社会にどのように貢献できるかを確認することも同講座の狙い。さらに、ハーブと薬膳に関する資格講座も来年に立ち上げたいとしている。
また、薬剤師を含めた医療者向けに、現場でハーブがどのように使用されているか、使用しない場合にどのようなデメリットがあるかなどを年度内にアンケート調査として実施する。調査結果は協会が論文形式などで発表し、講座や資格のあり方の検討材料に生かしたい考えだ。
金田氏は、「植物由来の医薬品は多く、自分が学んでいる内容がハーブの勉強にも役立つ。ハーブに関心がある人は増加傾向にあるので、薬剤師のスキルとして知識を持っておいた方が良いのではないか」としている。
日本メディカルハーブ協会
https://www.medicalherb.or.jp/