医療事故調査・支援センターは、このほど医療事故の再発防止に向けた提言第21号として「産科危機的出血に係る妊産婦死亡事例の分析」を公表した。
提言第21号の分析対象は11例で、それらの特徴は、産科有床診療所や一般病院などから母体搬送を実施した事例が7例、児娩出直後に産婦の心拍数・血圧が測定されていなかった事例が4例、児娩出から約1時間後までに産婦が産科危機的出血となった事例が8例あったとしている。これらを踏まえて、次の5つの提言を行っている。関連職種は、産婦人科医師、救急科医師、集中治療科医師、麻酔科医師、助産師、分娩に関わる看護師などである。
1,出血に伴う異常の早期認知(すべての医療機関に対して):すべての産婦に対して、児娩出直後からバイタルサインと出血量を経時的に測定し、その推移を総合的に評価することで、出血に伴う異常を早期に認知する。
2.出血に対する初期対応(すべての医療機関に対して):出血量が経腟分娩500mL以上(帝王切開1,000mL以上)となり、さらに持続出血を認める場合、初期対応における呼吸循環管理として、酸素投与・母体のバイタルサインのモニタリング・急速輸液を実施する。また、産科的管理として、止血処置、原因検索を実施する。産科有床診療所および一般病院などでは母体搬送の準備をする。
3.集学的治療への速やかな移行(すべての医療機関に対して):分娩後異常出血となり、さらに持続出血を認める場合、その時点で集学的治療への移行が必要となる。産科有床診療所および一般病院などでは、直ちに母体搬送する。高次医療施設では母体搬送の症例も含めて、全身管理医や他科の医師と連携して対応するとともに、輸血準備を開始する。
4.産科危機的出血の宣言と集学的治療(高次医療施設に対して):産科危機的出血と判断した場合、「産科危機的出血」を宣言するとともに、対応を指揮するコマンダーを決定する。また、致死的3徴(低体温・アシドーシス・血液凝固障害)を防ぐために、加温された輸血の投与や積極的止血法(IVR、子宮摘出術など)の集学的治療を実施する。さらに、大量輸血時には、高カリウム血症の可能性を考慮して対応する。
5.母体救命のための体制強化(すべての医療機関に対して):平時から地域の医療機関間で連携し、母体搬送の体制構築・維持を図る。また、異常の認知から迅速に対応できるように、シミュレーション・トレーニングを実施する。さらに、高次医療施設においては、集学的治療へ円滑に移行できるよう、全身管理医や他科の医師、多職種を交えて実施する。
厚生労働省は、22日付けの医政局地域医療計画課医療安全推進・医務指導室長、医薬局医薬安全対策課長の連名通知で、この提言第21号の公表について、一般社団法人日本医療機器産業連合会会長、欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会委員長、一般社団法人米国医療機器・IVD工業会会長あてに通知した。
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