日本薬学生連盟広報部は、薬学生時代からYouTubeで日常の姿を発信し、現在も薬局で働きながら薬剤師の日常を伝えている、まい丼maidonさんにお話を聞きました。庄司春菜(東京薬科大学薬学部4年生)、曽根駿介(同6年生)、塚本有咲(大阪医科薬科大学薬学部5年生)、佐藤匠真(日本薬科大学薬学部5年生)、小林もあな(北里大学薬学部5年生)、鈴木憲子(同4年生)、谷川優人(明治薬科大学3年生)が聞き手となり、約12万人のチャンネル登録者を持つYouTuberとしての活動や、薬剤師として働く中で感じること、薬学生へのメッセージなどを語っていただきました(執筆:庄司春菜)
多忙な生活も「今しかない」
――なぜ薬学生時代からYouTubeで発信することにしたのですか。
私は当初、薬学生として発信しようと思っていたわけではありません。人前に立つ仕事がしたいと思い、YouTubeでの発信を始めました。最初にダンスレクチャーの動画を投稿したものの、なかなか見てもらえませんでした。そこから自分の様々な姿を見せていく中で、薬学生としての一面がみんなに刺さったみたいで、動画を見てくれる人が増えました。
――YouTubeやSNSで顔出しをしたり、自身の生活を発信したりすることに戸惑いはありませんでしたか。
たくさん考えました。友達に相談した際も、私のことを心配してくれて、反対されたこともありました。でも、やらない後悔よりもやった後悔の方がいいと思い、YouTubeを始めました。勢いで始めたところもありますね。
――多忙な中、YouTubeと学業や仕事を両立してきたコツはありますか。
コツというよりも気合でした。例えば、5年次の実務実習の時は週5~6本の動画を投稿していたのですが、その頃は朝から晩まで実務実習に取り組み、その後ジムに行って帰宅後に動画を編集し、2時間ほど寝て翌日また実習に向かうという生活でした。忙しかったですが、とても楽しく、苦ではなかったので、とにかくがむしゃらにやっていたというのが正直なところです。また、本格的に薬剤師国家試験対策の勉強に取り組んでいた時も、今しかない、これは私にしか発信できないと考えて動画を撮っていました。視聴者の応援が力になりました。
――YouTubeの活動は就職にも役立ちましたか。
YouTubeで培った知識やスキルをぜひ生かしてほしいということでお誘いいただいたことも何度かありました。現在の勤務先でも、今までの経験がとても役立っています。そう考えるとYouTubeでの活動がPRになっていた面はありました。
言葉の持つ力の大きさ感じる‐スキル持つことが大事な時代
――YouTubeをきっかけとしてできたつながりはありますか。
友達がたくさんできました。薬剤師業界だけでなく、医師やYouTube業界の友達など、本当に幅広い出会いがありました。医療とは全く関係のない業界で会社を経営しながら薬剤師をしている方など、個々にスキルを持った人と出会えたことは大きかったです。薬局でも「まい丼ちゃんだね」と声をかけていただき、そこから仲良くなったこともあります。
――発信する側に立って得た知見はありますか。
動画を発信する中で、言葉の持つ力は良い意味でも悪い意味でも大きいと感じました。私が何気なく発した言葉が、誰かにとって救いになることもあれば、嫌な気持ちにさせてしまうこともあります。私は、誰かに嫌な思いをさせてしまう動画は出したくないというポリシーを持っているので、特に言葉には気をつけて発信していました。その経験は、今の薬剤師としてのスキルにも生きています。例えば、「この薬にはこの副作用があります」と説明する時、直接言ってしまうことで、患者さんが怖くなって薬を飲んでくれなくなってしまうことがあります。良い言い回しで、伝えなければならないことを伝えるために、YouTubeの活動で得たスキルが役立っていると感じます。
――どのような内容の動画が視聴者の心に刺さったと考えていますか。
薬学生や薬剤師がどのような生活を送っているのか、大学のスケジュールはどのようなものなのかなど、日常の模様を伝える動画に関心を持ってもらえた印象があります。特に、「こういうつらいことがあったよ」と視聴者に語りかける動画は、たくさん見てもらえました。解決策を示さなくても、「これがつらかったです」という気持ちを伝えるだけで、「まい丼ちゃんにもこういうことがあるんだ」と共感してくれる人がいました。
――YouTuberの立場から、薬剤師のキャリアの多様性についてどう思いますか。
私がYouTubeを始めた頃から、「これからは個性の時代になっていく」と言われていました。当時はAIも今ほど発達していませんでしたが、今は環境が急速に変わっています。だからこそ、これからの時代は、個人がそれぞれスキルを持つことがより大事になってくると思います。
薬の情報は正しく伝えて‐感情の理解が人間の強み
――薬局薬剤師としてやりがいを感じるのはどんな時ですか。
患者さんが元気になった姿や、ご家族が安心した姿を見るとよかったなと思います。薬局の良いところは、患者さんとの距離がとても近いことです。検査値を見て、その人の生活状況を聞くことで、より薬剤師として仕事をしているなと実感することが多いです。
――現場で働いてみて感じた、大学では教えてくれない薬剤師に求められていることは何ですか。特に、新人の頃に一番必要だったと感じたことは何ですか。
実務実習と異なるのは、責任感と慎重さです。現場ではどれだけ気をつけていても、人間である以上、思わぬところでミスを起こしてしまうことがあります。患者さんの命を背負っているお仕事なので、一つひとつの物事に対してかなり慎重に対応する癖がつきました。
認知能力や自立度、治療へのモチベーションが患者さんによって様々である中、全員にしっかり薬を飲んでもらえるよう、たくさん工夫をしてコミュニケーションを取っています。
新人の頃に一番必要だったと感じたことは、正しい情報を調べる力でした。1年目で知識がない時でも、患者さんから「これはどうなんですか」と質問を受けます。早く答えなければと思うかもしれませんが、一番大事なのは、早く答えることではなく、正しい情報を伝えることです。わからなかったら、「調べてもいいですか」と患者さんに伝えて、しっかり調べてほしいです。1年目の時はたくさんインプットしてほしいです。
今の時代は情報過多で、正しい情報もあれば間違った情報もあります。だからこそ、添付文書を見ればこれは分かるとか、インタビューフォームを見ればこれは分かるなど、どこを見れば正しい情報が載っているのかを勉強してほしいと思います。
――薬剤師がAIやDXで代替できる存在にならないために必要なことは、どのようなものでしょうか。

まい丼maidonさん(前列左から2番目)と日本薬学生連盟広報部のメンバー
誰にでもできてしまう作業は、今後AIに置き換わっていく可能性があります。ただ、人と人のつながりは残るでしょう。人間は感情で動く生き物です。患者さんだけでなく、介護しているご家族にも感情があり、生活背景や置かれている環境など、様々な要素が複雑に絡みます。薬剤師業界でも、患者さんとの会話をAIが聞き取り、要約してくれる技術が発達していますが、AIが人間に勝てないところは感情や人とのつながりです。私はそこを大事にしたいです。
――薬学生が社会に与えることができる価値には、何があると思いますか。
近年はAIの活用も広がり、新しい時代になっています。若いからこそできることもありますので、ベテラン薬剤師に対しても怖がらずにどんどん新しい知識や考え方を提案してほしいです。
――薬学生へメッセージをお願いします。
国家試験を受けて薬剤師になった後、どの道に進むかは人それぞれです。薬剤師にこだわらなくてもよいですし、薬剤師になるとしても、みんなが思い描いているような薬剤師になる必要はありません。薬剤師としての仕事の面でも、自分のプライベートの面でも、自分がやりたいことにどんどん挑戦してください。

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