時流に対応した講座実施

菅野氏
明治薬科大学(東京都清瀬市)は、認定薬剤師研修制度のプロバイダーとなった2007年から、薬局薬剤師が現場で生かせる生涯学習講座を提供している。薬剤師によるバイタルチェックや社会問題となっているポリファーマシーなど、受講者の関心が強く、時流に対応した講座を今年度も実施。受講者の利便性を考慮したeラーニングも拡充し、6年制に伴い設けられた講義内容の講座を新設したほか、漢方・鍼灸の講座では受講者のニーズに合わせた形式に変更するなど、「受講者第一」を徹底した内容としている。
明治薬大は薬局薬剤師をメインターゲットに、薬剤師が現場で生かせる講座を提供。昨年度に開設して受講者の人気を集めているバイタルチェックや、ポリファーマシーなどの講座に今年度も注力する。5月から半年間かけて開講しており、毎月第1日曜日はバイタルチェック、ポリファーマシー、緩和ケアなどをテーマとした講座、第4日曜日は漢方・鍼灸の講座を提供する。
薬学教育研究センター地域医療学准教授の菅野敦之氏は、今年度の生涯学習講座の特徴について、「時流に対応した内容を提供しているが、多職種協働につながる知識を獲得できるラインナップを目指す」と説明する。
在宅患者の状態を一定程度把握できる薬剤師の育成を目的とした「薬剤師によるバイタルチェックの基礎」講座では、医師免許を持つ教員が座学と共に、理解度を上げるためにシミュレーターを使用し、聴診器で心音・呼吸音・脈拍といったバイタルサインのチェック方法を学ぶ体験型の内容としており、募集開始から早期に定員に達するほどの人気を集めている。
社会的関心が強まっているポリファーマシーについては、定義や原因などの基本項目を説明した上で、多職種協働チームにおける薬剤師の役割について、着眼点、医師との連携方法などの具体例を交えながら紹介する。小グループによるディスカッションも行い、事例をもとに処方内容と対応方法を検討する。バイタルチェックの講座と同様に、募集後すぐに満員となるようだ。
緩和ケアの講座は、「入門編」と「中級・アドバンス」にレベルを分けた。入門編の受講を前提とせず、一人ひとりの理解度に合った講座を選択することができる。菅野氏は、その理由を「貴重な休日を使って受講してもらうため、個人のニーズに合った講座を選んでもらいたい」と語る。昨年度に新設した講座「最新がん化学療法の実際」も引き続き提供している。
漢方・鍼灸の講座では、従来は一つのテーマを1日かけて講義していたが、「休日を勉強とリフレッシュで両立してほしい」との考えから、医師の処方意図を読み解くなどの講義に加えて、鍼灸などの体験も含めた講義も併せて同日に開講する形式に変えた。他の講座に先行してeラーニングを導入しているほか、東京・紀尾井町のサテライトキャンパスでも講義を行うなど、受講者の利便性を考慮している。
一方で、学会などのイベントと講座の開催日がバッティングし、受講を諦めてしまうケースも見られることから、その対策としてeラーニングの充実を挙げる。昨年度は、在宅医療や薬剤師の職責などに関する講座にもeラーニングを導入し、受講機会が少ない人のサポートに注力した。
今年度は漢方・鍼灸に加え、4年制卒の薬剤師や、学び直しの意欲を持つ薬剤師向けの「薬物治療学」をテーマとした講座も新たにeラーニングで提供する。現在は婦人科系疾患からスタートしているが、主要疾患を中心に網羅することを目指し、段階的に拡大する方針だ。
菅野氏は「薬剤師の就業環境が厳しくなり、薬機法の改正に対応するためにも、薬剤師としての自己研鑽が絶対に必要となる。大学はこの変化への対応に必要な内容を提供できるかがポイントとなる」と語る。一方で、「プロバイダーが増加する中では差別化が必要となるので、いかに独自色を出せるかが課題」と指摘。「少人数でのグループディスカッションなど、少人数制にこだわりを持っている。講師との距離が近いことが大事なので、これからも続けていきたい」と語った。
明治薬科大学・生涯学習講座
http://www.my-pharm.ac.jp/lifelong/index.html