健康食品の専門家養成
神戸薬科大学は薬剤師認定制度認証機構(CPC)の認証を受けて、健康食品の専門知識を持った薬剤師を養成する特定領域認定制度を2018年度から開始した。科学的根拠をもとに消費者に正しい助言を行える薬剤師として、今年4月には初めて6人を認定した。同大学は07年に生涯研修認定制度(G07)の認証を受けて、研修事業を担うエクステンションセンターを開設。薬剤師の生涯研修に力を入れてきた。今後は健康食品領域研修認定薬剤師制度(P05)とG07を2枚看板に幅広い受講者層を開拓したい考えだ。
P05は、CPCが認定した研修機関で「研修認定薬剤師」を取得している薬剤師らを対象に、健康食品分野をテーマに講座やワークショップ形式の研修会を年間15講座ほど開催。構成は、健康食品の制度や法律の基礎を学ぶ3講座、医・薬・栄養・食品学の視点で健康食品を学ぶ9講座、消費者への助言や指導法を学ぶ3講座となっている。
研修生はこれらの講座で学んで単位を取得。実技実習なども受けて4年以内に40単位以上を取った後、約3000字の論文を提出する。例えば「健康食品の購入動機調査とお薬手帳の利用度の関連」など、日々の薬剤師業務の中で発見した健康食品に関するテーマを薬学的な視点でまとめる。その後、論文発表会を経て審査を通過すれば、健康食品領域研修認定薬剤師の認定を取得できる。17年度までエクステンションセンターが独自に認定してきた「健康食品指導薬剤師」は19年度までは資格を更新できるが、その後は制度を廃止し、P05に統合する予定。
今年4月に病院や薬局、保健所に勤務する6人を、同大学として初めて「健康食品領域研修認定薬剤師」に認定。5月に開催した認定証授与式では宮田興子学長(エクステンションセンター長)が認定証を授与した。認定取得者の1人は「患者からの質問に正しく回答できるように知識を整理したい」と話し、職場での資格の活用に意欲を示している。また、「健康であるためにどんな物を食べて、どんな生活をすればいいのか。薬と食品、健康食品との相互関係も気になる」という声も聞かれるなど、研究マインドを刺激するカリキュラムにもなっているようだ。
P05のルーツは、08年度にG07のリカレントセミナーの一部で開催した「健康食品セミナー」に遡る。特定健診の開始などを背景に開いたセミナーで、同時期に健康食品指導薬剤師認定制度も発足させた。10年度にはセミナーから独立させて健康食品講座を開講。17年度まで毎年約400~700人が受講した。
こうした基盤を発展させて構築したのがP05だ。CPCから二つの研修認定制度の認証を受けているのが同大学ならではの特徴である。エクステンションセンターの藤田光治主査は「生涯研修の一部だった健康食品分野の講座において特定領域認定制度の認証を取得した。今後は二つの制度を両輪にしていきたい」と語る。
G07の今年度のプログラム構成は、老年症候群とその予防法を学ぶ「卒後研修講座」、漢方や薬物動態を学び直す「リカレントセミナー」、フィジカルアセスメントや多職種連携を実践的に学ぶ「薬剤師実践塾」、実症例を題材に臨床介入や薬薬連携の方法をグループワークで学ぶ「症例検討会」。9月に開催するエクステンションセンターシンポジウムには厚生労働省や薬剤師キャリアコンサルタント、オンライン服薬指導に取り組む薬局など多方面から演者が登壇する計画だ。
今年度からは生涯研修プログラムのパンフレットを改訂。デザインや記載内容を見直し、一覧性を高めた。今後はウェブサイトの見直しも行う予定。G07とP05の多彩なプログラムを受講者が事前に把握しやすくした。藤田氏は「バリアのないセンターにしていきたい。研修プログラムの特徴を知ってもらい、幅広い年齢層の受講者に講座を受けてもらいたい」と語る。
神戸薬科大学エクステンションセンター
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